トップメッセージ


気候変動、エネルギー問題、水や天然資源の枯渇、貧困や格差、健康や衛生上の問題といった人類全体で取り組むべき世界的課題、また、日本国内に目を移すと、世界に先駆けて進む少子高齢化と社会全体の活力の低下といったように、現代世界は様々な課題に直面しています。不透明で不確実な世界において、企業の持続可能性を確かなものとするためにも、また、将来世代に持続可能な世界を残すためにも、事業プロセス全体にわたっての環境や人権といった社会面への配慮、また、CSRと経営の統合をはかっていくことが今まで以上に求められていると感じています。

CSRとして何をどこまでやるべきかは社会の要請によって変化するものであること、また、往々にして自社では気づかない問題もあることから、常にステークホルダーの声を聞きながら活動を進めていくことが不可欠です。その前提にたった上で、私は、スポーツ品製造・販売企業であるミズノにおけるCSRとは、『事業プロセス全体において、3つのF「フェアプレー(Fair play)」「フレンドシップ(Friendship)」「ファイティング・スピリット(Fighting spirit)」の精神に則ってモノづくりに向き合い、また、モノづくりを行うこと』として捉えられると感じています。より具体的には、国際的に重要とされている各種国際規範を尊重することはもとより、ミズノ製品に携わる全ての人、ミズノの社員だけでなくサプライヤーや将来世代も含めた全ての人が幸せを感じられるような環境を創造できているかという問いと向き合うということです。

ミズノは創業以来100年以上にわたり「より良いスポーツ品とスポーツの振興を通じて社会に貢献する」という経営理念のもと、徹底的に品質にこだわったスポーツ品を提供すること、また、あらゆるスポーツの振興を支援することでスポーツの楽しさを一人でも多くの人に届け、スポーツの力を最大限に活かして社会に貢献することを追求してきました。現在、世界には製品の品質や性能、また、環境・社会影響等を測る様々な規格や基準があり、それらを満たすことは国際的な評価に値する製品を製造するためにも必要です。ただ、単に数値や方法論を満たす形式主義に陥ることなく、本質を見失わずに、作り手も使い手も、そして、そこに携わる全ての人が幸せを感じられているかという視点をもつことが、ひいては「より良いスポーツ品」の提供、そしてCSRにもつながるというのが私の想いです。

特に、ミズノ製品の製造には国内外の多くの協力工場がパートナーとして携わっていますが、スポーツ品の製造は労働集約型の側面があることから、長時間労働や人権に関する問題が発生しやすい傾向があります。そのため、サプライチェーンにおける労働者の待遇や地域社会への環境・社会面での影響の把握と改善に向けたパートナーとの協力は不可欠です。サプライヤーにおけるCSR状況の改善は、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に示される国際的に求められる人権の尊重という面だけでなく、パートナーとの信頼関係の構築にも役立っていると感じています。今後も、新規製造拠点への対応、また、特にリスクの高い二次・三次サプライヤーへの対応等、サプライチェーンにおける環境・社会面の取り組みには重点的に取り組んでいきます。

また、製品・サービスにおける環境負荷の削減も、将来世代に持続可能な世界を残すためだけでなく、様々な天然資源の枯渇が危惧される中で持続的な供給を確保するという点においても一層重要になってきています。ミズノでは、「ミズノグリーングレード」という独自の環境影響評価制度を構築し、自社製品全てにおける環境負荷の低減に全社一丸となって取り組んできましたが、2020年までに継続製品も含む全製品をミズノグリーングレード認定製品にすることを目指し、今後も取り組みを進めていきます。また、ミズノの事業活動との関連性が高く影響が大きい社会課題に対し、例えば水を使わない染色技術の採用による水資源の保全や、高齢者向けの運動器具およびプログラムの開発を通じた高齢者の生活の質の向上と社会的コストの低減といったように、事業を通じた課題解決への貢献も進めていきます。特に、高齢者の健康寿命の延伸は、世界に先駆けて高齢化が進む日本特有の課題といえますが、将来的な他地域における応用も視野に力を入れて取り組んでいます。

ミズノの創業者 水野利八は「利益の利より道理の理」として「人間の道(理)を踏み外さずに利益をあげること」を説いた言葉を残しています。企業は、企業である限り、利益をあげなければなりません。利益を上げることは、経営理念を実現するためにも、また、従業員やサプライヤーといった様々なステークホルダーの生活を支えるという点においても重要です。一方で、我々の事業活動や意思決定は様々な形で社会に影響を及ぼしており、そのことを理解した上で利益のあげ方について考える必要がある。ステークホルダーの声を聞き、自社の事業活動が社会に対しどのような影響を及ぼしているかを理解し、必要に応じて適切な対応をとり、その上で利益をあげる。CSRと経営の統合は一朝一夕にはいきませんが、ミズノは、3つのF「フェアプレー(Fair play)」「フレンドシップ(Friendship)」「ファイティング・スピリット(Fighting spirit)」に基づき、ステークホルダーとの対話を行いながら歩みを続けていきます。

ミズノ株式会社
代表取締役社長
水野明人