サステナブルな植物由来の新素材「改質リグニン」を活用するための共創
近年、カーボンニュートラルの重要性が高まり、社会全体で石油資源の使用量低減が求められています。具体的な期待としては、プラスチックの資源循環や石油原料からバイオ原料への代替などです。
ミズノでは、ゴルフクラブのシャフトやバット、ラケットなど、さまざまな製品に軽量かつ高強度という特性を持つ繊維強化プラスチック(FRP)を使用しており、このFRPに植物由来の素材を適用することで環境負荷の軽減に貢献できないかと考え、開発に取り組みました。
今回は、FRP製品の植物由来比率を向上させるべく、国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所(以下:森林総研)や地方独立行政法人 大阪産業技術研究所(以下:大阪技術研)と共創。「木」から取り出した「改質リグニン」をFRPの素材とすることで、FRPをより高性能化することに成功しました。

開発のポイント
研究開発のきっかけ
ミズノは、現在も製造している野球用バットのほか、過去にはゴルフクラブやスキー板などの木製用具を世に送り出してきました。資源の再利用という観点から、折れたバットや製造時に生じる削りくずや端材を新たな製品へと生まれ変わらせることができないか検討する中で、「リグニン」という素材に着目しました。
リグニンとは
「リグニン」は木材の約3割を構成する物質であり、「木」の強度や耐久性を構成する成分として注目されています。しかし、「リグニン」は植物の種類により性質が異なり、バラツキも大きく変質もしやすいので高性能な工業材料としての利用は困難でした。

近年、森林総研により、国内の「スギ」を原料とした「改質リグニン」と呼ばれる新素材を安定的かつ簡便に取り出す方法が開発されました。
ミズノでは2020年から、「改質リグニン」をはじめとするバイオベース新素材の産業化に向けたネットワーク構築を進めるために設立された「地域リグニン資源開発ネットワーク(通称「リグニンネットワーク」)に参画して連携を図っており、今回の共創へとつながりました。

「改質リグニン」を活用したFRP材料の開発における共創
「改質リグニン」の活用では、森林総研、大阪技術研との共創で研究開発を進めました。今回は、FRPのマトリクス樹脂※1の原料として活用することを目指しました。まずは「はかる」「つくる」「ためす」を高速回転させることができるイノベーションセンター「MIZUNO ENGINE」※2で、素材や加工方法の試作・検証を進め、素材が持つ基礎的な性能の把握から取り組みました。
その結果、マトリクス樹脂として「改質リグニン」の活用可能性を見いだし、コンセプトモデルの作成へと至りました。
※1 マトリクス樹脂:FRPを構成する材料の一部。樹脂が固まることで繊維を固定する接着剤のような役割を果たし、多様な形状に成形することが可能になる。FRPのマトリクス樹脂には石油資源由来の樹脂が一般に使用されている。
※2 イノベーションセンター「MIZUNO ENGINE」が稼働開始(2022年11月稼働) https://corp.mizuno.com/jp/news-release/2022/20221108

展示会にコンセプトモデル「雪駄(せった)」を出展

2026年1月28日から1月30日まで東京ビッグサイトで開催される展示会「GREEN MATERIAL 2026」のリグニンネットワークのブース内において、スポーツ業界では初となる「改質リグニン」を活用したコンセプトモデル「雪駄(せった)」を展示します。
「雪駄(せった)」は、「改質リグニン」を活用したFRPプレートを搭載しているのはもちろん、多くの部材に天然素材やリサイクル材などのサステナブル素材を使用しています。同時に、現在ミズノが販売しているカーボンプレート搭載の雪駄※3と同様に、独自の転がり感と弾性のある履き心地を実現した設計となっています。
※3 カーボンプレート搭載の雪駄「SETTA C/Reborn(セッタ シー リボーン)」https://corp.mizuno.com/jp/articles/0082


今後の展開
今回、ミズノの持続可能な社会の実現に向けた取り組みのひとつとして、植物由来物質の新素材「改質リグニン」の性能を把握するとともに、コンセプトモデルを生み出しました。今後は、「改質リグニン」を活用したさまざまなFRP製品を生み出すべく検討を進めます。
ミズノでは、1990年代から30年以上にわたり環境保全活動に精力的に取り組んできました。今後も、スポーツメーカーとしてさまざまな企業や団体と共創し、環境負荷の少ない素材や設計・製法の研究開発を進めてまいります。