サプライヤーにおけるCSR状況の把握と改善に向けた取り組み

  • 重要課題

一次サプライヤーにおける監査の実施と是正に向けた取り組み

取引中のサプライヤーCSR監査については、「ミズノCSR調達規程」に基づき、主なサプライヤーである163以上の工場に直接赴き、定期的(3年で一巡、一部優良工場は5年に一度)にミズノCSR調達行動規範に定める内容の遵守状況についてモニタリング(CSR監査)を実施しています。モニタリングは、現場監査、書類監査、従業員インタビューにより構成され、通常は複数の監査員が1日~数日かけて行います。遵守状況の確認には、ISO26000をベースとしたグローバルで共通のモニタリングシートを使用し、監査項目を致命的、重大、一般の3段階に分類し、ポイント加算方式で行っています。設備等により監査項目が該当しない場合があるため、該当項目の合計ポイントに対する獲得ポイントの割合を百分率で表しています。問題が発見された場合は、適切な是正措置を共に考え、評価ランクC以下の場合は6か月後に再びフォローアップ監査を行っています。2018年度は33工場の監査を行いました。

CSR監査の流れ


1.オープニングミーティング 2.工場監査 3.書類監査 4. 従業員インタビュー 5. クロージングミーティング
監査員から工場の責任者や人事総務担当者、組合長等に対して「ミズノCSR調達ガイドライン」を利用し、監査の主旨を伝えるとともに、スケジュールなどについて説明を行います。 工場内を点検しながら不明な点は随時担当者へ質問。また生産現場だけでなく、食堂や寮にも赴き、安全衛生面や生活環境は守られているかを確かめます。 ※全建屋対象 児童労働の有無や、労働時間や給与、社会保険は適切か、建築や消防に関する書類は揃っているか、環境に関する必要な測定は実施しているかなどを点検します。 労働時間、休暇、賃金、健康診断などについて従業員の方に質問し、工場責任者の証言や書類の内容と一致するか確認します。また、セクハラや差別、虐待といったことがないか確認します。 現場監査と書類チェックの結果をまとめ、工場責任者に監査結果を報告するとともに、今後の改善の計画などを話し合います。詳しい評価は、後日ミズノから連絡します。

2018年度のCSR監査実施状況

サプライヤー
※1
重要なサプライヤー数 2016年度
監査実施数
(参考)
2017年度
監査実施数
(参考)
2018年度
監査実施
※2
日本 107 53 11 7 4
中国 145 47

17

24 17
韓国 14 1 0 0 0
台湾 19 7 0 0 0
インドネシア 19 10 3 3 2
ベトナム 49 21 8 4 3
タイ 10 8 4 2 1
フィリピン 3 3 1 1 0
ミャンマー 10 5 0 1 3
カンボジア 7 1 1 1 0
その他 26 7 3 0 3
409 163 48 43 33注3
(注) 1.2018年4月時点。2016年度からCSR監査対象とする条件を変更した。
  2.ミズノでは3年で一巡するよう主要工場での監査を実施している。
    但し、一部の優良工場については、5年に一度としている。
  3.新規サプライヤー候補工場への事前監査を含む。

CSR監査対象とする条件の一つ

ミズノでは世界銀行が発表する「世界ガバナンス指標」を参考に独自の視点も加えて、人権リスクが高いと考えられる国々についてCSR監査の対象国としています。この作業は直近の「世界ガバナンス指標」を参考に毎年レビューを行っています。国民の声(発言力)と説明責任、政治的安定と暴力の不在、政府の有効性、規制の質、法の支配、汚職の抑制などで総合的に上位に位置付けられた国々についてはCSR監査除外国としていますが、日本については、外国人技能実習生を雇用している工場に人権問題の懸念があるとの判断でCSR監査を実施しています。

世界ガバナンス指標

総合指標 指標の意味
国民の声(発言力)と説明責任
(Voices and Accountability)
国民の政治参加(自由かつ公正な選挙など)、結社の自由、報道の自由があるかどうか。
政治的安定と暴力の不在
(Political Stability and Absence of Violence)
国内で発生する暴動(民族間の対立を含む)やテロリズムなど、制度化されていない、あるいは暴力的な手段により、政府の安定が揺るがされたり、転覆される可能性がどれだけあるか。
政府の有効性
(Government Effectiveness)
行政サービスの質、政治的圧力からの自立度合い、政府による政策策定・実施への信頼度、政府による(改革への)コミットメント。
規制の質
(Regulatory Quality)
その国の政府が、民間セクター開発を促進するような政策や規制を策定し、それを実施する能力があるかどうか。
法の支配
(Rule of Law)
公共政策に携わる者が社会の法にどれだけ信頼を置いて順守しているか。特に契約の履行、警察、裁判所の質や、犯罪・暴力の可能性など。
汚職の抑制
(Control of Corruption)
その国の権威・権力が一部の個人的な利益のために行使される度合い。汚職の形は大小を問わず、また一握りのエリートや個人の利害関係による国家の支配も含む。

主なモニタリング内容

ミズノでは、主に以下の項目について監査を行っています。監査項目は、致命的、重大、一般の3段階に分類され、それぞれポイントに重み付けをしています。監査対象工場の設備等で該当する監査項目が若干異なるため、該当する監査項目ポイントの合計を割合で表しています。

監査項目と平均点(2018年度) 

平均点(全体)
人権 児童および未成年労働者 99%
強制労働 100%

結社の自由

94%
差別 100%
懲罰慣行 99%
労働慣行 労働時間 81%
報酬 90%
安全衛生管理システム 95%
安全衛生>職業上の安全衛生 92%
安全衛生>機械及び設備 67%
安全衛生>電気 90%
安全衛生>化学物質 76%
安全衛生>消防 73%
安全衛生>救急処置 78%
安全衛生>飲料水・洗面台・便所 96%
安全衛生>厨房 91%
安全衛生>寮 96%
環境 環境 88%
その他 監査協力姿勢 100%
平均 90%

国別平均点

人権に関する不適合項目について

人権項目に属する、児童および未成年労働者、強制労働者、結社の自由、差別、懲罰慣行の5項目で2018年度の監査で指摘のあった内容とその是正状況を下表に示します。

分類 内容 是正状況
児童および未成年労働者 未成年労働者の当局への登録 不適合1件、是正完了
未成年労働者のための健康診断 不適合1件、是正完了
強制労働 すべての労働者が工場と雇用契約を締結 不適合1件、未完了・追跡中
結社の自由 労働組合を結成し、加入する労働者の権利 不適合2件、未完了・追跡中
差別 指摘なし
懲罰慣行 懲罰規則の法的要求事項の充足 不適合1件、是正完了

監査結果の評価ランク

ミズノでは、評価指数90点以上を評価ランクA、評価指数80-89点をB、評価指数70-79をC、評価指数69点以下、または、児童労働・強制労働が発見された場合をDとし、監査結果を4段階で評価しています。
2018年度の監査対象工場の評価ランクは以下の通りです。

評価ランク 対象数
A 20
B 13
C 0
D 0
全体 33

違反が確認されたサプライヤーの是正状況

不適合が多かった項目

監査で評価の低かった項目は「安全衛生(機械及び設備)」「労働時間」「報酬」「安全衛生(消防)」「安全衛生(化学物質)」「安全衛生(救急処置)」などでした。具体的には、機械の危険な部分の保護装置、残業や休日出勤などの長時間労働、社会保険の提供、有害物質の保管や管理方法、消防設備の維持管理などの問題が発見されました。

全体

順位 分類 要求事項 不適合
割合
1 安全衛生>機械及び設備

機械の危険な部分のために、適切な保護装置が設置されているか?

57.6%
2 労働時間 工場の労働時間は法的要求事項を満たしているか? 48.5%
3 報酬 労働者は、現地の法的要求事項を満たす社会保険を提供されているか? 39.4%
3 安全衛生>消防 出口および非常口は、標識または表示灯と共に確認されているか? 39.4%
5 安全衛生>化学物質 危険/有害物質は安全かつ厳重に保管されているか? 36.4%
5 安全衛生>消防 工場は現地の消防行政機関によって発行された有効な消防検査証明書 / 許可証を持っているか? 36.4%
5 安全衛生>消防 各工場フロアにおいて、非常口および避難経路には障害物がなく、施錠されておらず、また、適切であるか?  36.4%
8 安全衛生>化学物質 有害化学物質は適切にラベル表示されているか? 33.3%
8 安全衛生>消防 現場の建物が構造的に安全であり、点検され、かつ地方自治体によって発行された証明書/許可証を持っているか? 33.3%
8 安全衛生>救急処置 選ばれた労働者は救急処置のトレーニングに出席していたか? 33.3%

 

不適合項目の是正状況

全体 140件 100%
是正済 81件 58%
未是正 59件 42%
※2018年度CSR監査実施分の2019年5月20日現在の状況

二次・三次サプライヤーにおける対応

ミズノでは、ミズノと直接的な関係をもつ一次サプライヤーにおける人権、労働、環境影響の把握と必要に応じた是正を、第一に優先するべき重要課題として取り組みを進めています。
一次サプライヤーの先の二次・三次サプライヤーについては、全サプライヤーを対象とすることは難しいため、著しい人権、労働、環境影響が発生するリスクの高い領域に焦点を据えた取り組みを進めています。ゴルフクラブのアイアンヘッド等のメッキ、繊維素材の染色、野球グラブやシューズ用の皮革なめし等のリスクが高いと思われる二次・三次のサプライヤーの把握を行い、2017年度には、二次・三次サプライヤーの実情を把握するため、日本の金属加工工場とタイの生地染色加工工場を視察しました。
2018年度には、中国のメッキ工場、ベトナムの皮革なめし工場、シューズのアッパー(甲皮材)工場、シューズのゴム底工場のCSR監査を実施しました。ベトナムのシューズのアッパー工場のみ基準を下回る評価ランクCとなったため、現在問題点の是正を進めています。

CSR監査以外での対応

ミズノでは、ミズノCSR調達行動規範に定める内容の遵守状況についてモニタリング(CSR監査)を実施していますが、特にリスクの高い地域においては、監査以外でもCSR担当者が工場視察で現状確認を行い、是正が必要な場合はアドバイスを行っています。工場視察の際には、ミズノのCSRに対する考え方、またCSRの意義についても説明し、一方的な押し付けではなく、その意義を理解し、納得した上で取り組んでもらえるようにしています。2018年度は、日本とタイの縫製工場、中国のなめし工場とメッキ工場などで現地視察を行いました。

現在、ミズノの製造委託先工場の多くは東南アジアに立地していますが、現地の急速な経済成長を背景として今まで以上に環境問題や労使紛争などが起こりやすい状況になってきています。このような社会の変化を受け、CSR監査における不適合項目の是正だけでは根本的な人権・労働・環境問題の解決にはつながりにくくなっている中で、今後はCSR監査以外の活動、特に工場のキャパシティ・ビルディング(能力向上)に力を注いでいく必要があると考えています。

2018年度はキャパシティー・ビルディングの取り組みとして仕入先を対象としたCSR調達セミナーをミズノ大阪本社ビルで開催しました。4社6名の皆さんが受講し、CSRとサスティナビリティーに関する世界の潮流とミズノの取り組み、これまでのCSR調達監査で指摘された主要な問題点と是正の進め方について理解を深めていただきました。

ミズノCSR調達セミナー
(1月ミズノ大阪本社ビル)

IndustriALLとUAゼンセンとの協働

ミズノは、製造委託先工場の労働者の人権保護、労働条件の向上のために共に正当なパートナーとして尊重し協力し合う目的で、2011年にITGLWF:国際繊維被服皮革労組同盟(現在はIndustriALL)、UIゼンセン(現在はUAゼンセン)、ミズノユニオンと「グローバル枠組み協定」に署名しました。この協定締結により、ミズノは締結者を正当なパートナーとして尊重し、ILO:国際労働機関が定める中核的労働基準(結社の自由、団結権の保護、児童労働の廃止など)の適切な実施に向けて取り組んでいます。

2012年に労働争議が発生したインドネシアのシューズ工場では、現地の労働組合から提起された問題について実情把握のために、IndustriALLとUAゼンセンそしてミズノユニオンが工場を訪問して調査を実施しました。2015年度には現地の一部の労働組合が問題解決に向けて、グローバルなNGOへの支援を要請しミズノに対するキャンペーンを展開しましたが、IndustriALL 、UAゼンセンという国際的な労働組合の代表と協力することで効果的な対応が可能となっています。


 

中国の環境NGO「IPE:公衆環境研究中心とGCA:緑色選択連盟」への協力

中国の環境NGO「IPE:公衆環境研究中心とGCA:緑色選択連盟」は中国の環境汚染改善に向けて取り組んでいますが、ミズノはサプライチェーンで発生した環境規制や環境監査での違反事例にサプライヤーと協力して対応しています。ミズノは上海ミズノを窓口に積極的にIPEとコミュニケーションを行っており、「IPE:公衆環境研究中心とGCA:緑色選択連盟」が発表する対応状況(CITI指数)ランキングで、全361ブランド中44位となっています。(CITI指標2019年3月時点)

今後の課題

  • CSR調達監査で指摘された問題の是正が重要です。サプライヤーとの対話を通じて是正の促進に引き続き取り組みます。
  • 同じ工場が複数のブランドの製品を受託して製造している場合、それぞれのブランドからの監査を受入れ、対応しなければならないといった監査の重複や、要求事項の違いなどに対する改善の要望を受けて、業界団体やその他のイニシアチブで取り組みが進んでいます。ミズノも改善に向けてこれらを研究していきます。
  • CSR監査は監査時点の現況と書類による過去の状況を把握することはできますが、工場を常時モニターすることはできません。これを補足するものとして「苦情処理メカニズム(グリーバンス・メカニズム)」の構築が有効とされています。受付窓口の設置、言語対応、問題の軽重の選別などにどう対応すべきかを検討します。