サプライチェーンマネジメント
基本的な考え方
ミズノは、人権や労働環境の尊重、環境への配慮、公正な取引を根底とするサプライチェーンマネジメントの重要性を認識し、「ミズノCSR調達行動規範」を定め、これを遵守するCSR調達活動に取り組んでいます。
国内外のサプライヤーと共通の認識のもと、CSR監査を実施することで、法令遵守はもとより人権、労働条件、安全衛生、環境保全などについての現況や取り組みを確認するとともに、適切とはいえない事象があった場合には、その解消や是正に向けて有効な働きかけを行っていきます。
ミズノCSR調達行動規範については、日本語、中国語(繁体字、簡体字)、英語の3カ国語を完備し、サプライヤーに配布しています。また、母国を離れ海外の製造工場で働くケースへの配慮から、下記の多様な言語の翻訳版を用意しています。
イタリア語、インドネシア語、ウルドゥ語、韓国語、カンボジア語(クメール語)、 スペイン語、タイ語、ドイツ語、トルコ語、ブルガリア語、ベトナム語、ポルトガル語、 ベンガル語、マレー語、ミャンマー語、ラーオ語(ラオス語)、リトアニア語、ルーマニア語
また、サプライヤーの経営層や幹部従業員がミズノCSR調達行動規範の主旨への理解を深めるため、サプライヤーとの対話を図り、サプライヤーにおける組織的な能力の向上(「キャパシティ・ビルディング」と表現される取り組み)を支援しています。
サプライチェーンの状況
当社は、スポーツシューズ、スポーツウエアおよびゴルフクラブなどの製品を自社工場ならびに委託先工場(「サプライヤー」)で製造しています。
主要なサプライヤーの所在国は、日本国内のほか、中国、台湾、インドネシア、ベトナム、タイ、フィリピン、ミャンマー、カンボジアなどです。
サプライチェーン全体の状況
当社の一次サプライヤーの「製品カテゴリー別」と「国・地域別」の内訳はESGデータをご参照ください。
重要なサプライヤーの状況
年間取引金額および占有率、ならびに製品の重要性などの観点から、当社の事業継続や事業価値にとって影響の大きいサプライヤーを「重要なサプライヤー」と位置づけています。重要なサプライヤーの状況(一次サプライヤー)はESGデータをご参照ください。
重要なサプライヤーの状況について以下を開示しています。
- 重要なサプライヤーの数:207
- 全一次サプライヤーに占める重要なサプライヤーの割合:46.9%
- 全調達金額に占める重要なサプライヤーからの調達金額の割合:96.5%
- 重要なサプライヤーのうち、ミズノが大口納入先※となっているサプライヤーの割合:34.8%
※ 当該サプライヤーの年商に占めるミズノ向け取引の割合が30%以上
サプライヤー情報の開示
当社のサプライチェーンの状況を理解いただくため、2017年度から「サプライヤーリスト」を開示しています。サプライヤーリストでは下記の項目を開示しています。
① サプライヤー名
② 所在地
③ 所在国
④ 製品カテゴリー(Apparel/Equipment/Footwear)
⑤ 従業員数(Less than 1000/1000 to 5000/5001 to 10000)
⑥ 親会社
⑦ 女性従業員の割合
⑧ 移民労働者の割合
⑨ 労働組合の有無
国内外でのCSR調達監査実施と改善への取り組み
当社におけるCSR調達監査は、当社グループの調達先はもとより、ライセンス供与先や販売代理店の調達先までを対象範囲としています。
CSR調達の取り組みには、新規のサプライヤーとの取引開始前に行う事前評価と、取引を継続中のサプライヤーに対する定期的な監査の2段階のプロセスがあります。
また、海外の委託先工場におけるCSR調達状況の改善に向けて、その分野に精通している外部機関などと共同で取り組むことも有効であると考えており、今後の課題と位置付けています。
新規サプライヤー候補工場のCSR事前評価
当社は、CSR調達を実効性あるものとするために、取引開始前の事前評価が重要であると考えています。そのため、ミズノCSR調達規程に基づき、新規サプライヤーに対するCSR事前評価の仕組みを設け、主要な新規サプライヤー候補に対して、生産開始に先立ち、「人権」・「労働慣行」・「安全衛生」・「環境(への影響)」の観点から評価を実施しています。
CSR事前評価のための監査を実施する前に、当該サプライヤー候補に「ミズノCSR調達行動規範」、「ミズノCSR誓約書」、および「ミズノCSR自己診断チェックリスト」の3文書を提示し、サプライヤーによる独立した意志のもと同意いただける場合は、「CSR誓約書」に署名の上、提出いただくこととしています。さらに、CSR調達の解説書でもある「ミズノCSR調達ガイドライン」に沿って説明を行うことで、CSR調達への理解を得ることは言うまでもありません。
実施した監査の評価結果が取引開始の要件である「評価B(評価指標80-89)」に満たないサプライヤーに対しては、監査報告に基づいて是正計画の協議および是正に向けた助言・提言を行います。また、必要に応じて現場を訪問するケースもあります。これらの取り組みにより、ミズノが要求する基準に適合していることを確認できた上で取引を開始することとし、CSR調達を実効性のあるものとしています。
CSR事前評価の流れ
2024年度の実施状況
2024年度、新規のサプライヤー候補に対し、事前評価(監査)を行いました。
事前評価の評価等級別のサプライヤー数は下記の表のとおりです。
すでに他社監査機関のアセスメントを受けている新規のサプライヤー候補が、近年増加傾向にあります。他社機関が監査を実施した結果をミズノ基準に照らして検討・評定することによって、新規のサプライヤー候補が取引開始の要件を満たしているかどうかを判定しています。
| 事前評価 | サプライヤー数 |
|---|---|
| 評価A | 2社 |
| 評価B | ― |
| 他社監査機関のアセスメントに対してミズノ基準での評価B相当以上 | 18社 |
| 合計 | 20社 |
「評価B」に満たない場合の是正
当社は、事前評価で評価Bに満たないサプライヤーに対して、結果のフィードバックを行い、不適合と評価された項目について、具体的で現実的な是正や改善の方法をサプライヤーと協議します。
是正・改善計画はサプライヤーの自主性を重んじますが、適宜チェックと助言を行い、取引開始の前提となる評価B以上に到達するまでフォローアップします。
一次サプライヤーに対する監査の実施と是正に向けた取り組み
取引継続中のサプライヤーに対するCSR監査は、「ミズノCSR調達規程」のもと、主なサプライヤーである約200以上のサプライヤーを対象として、ミズノCSR調達行動規範に定める内容の遵守状況について定期的(3年で一巡)にモニタリングを実施しています。
モニタリング方法には、ミズノが監査機関に委託して行う直接的な監査と、他の監査機関によるアセスメントをミズノ基準に照らして評定する2通りがあります。
2024年度においては、他の監査機関によるアセスメントを含め、58のサプライヤー(うち国内4、海外54)に対して、評定を行いました。
それによる結果の評価等級別のサプライヤー数は以下のとおりです。
| 定期監査の評価 | サプライヤー数 |
|---|---|
| 評価A | 16社 |
| 評価B | 6社 |
| 評価D | 1社 |
| 他社監査機関のアセスメントに対してミズノ基準での評価B相当以上 | 35社 |
| 合計 | 58社 |
このうち、直接的な監査を実施した23のサプライヤーの所在国別の評定点を下記のグラフに示しています。
国別監査件数と平均点
CSR監査は、現場監査、書類監査、従業員インタビューにより構成されているため、通常は複数の監査員が1日~数日かけて行います。遵守状況の確認には、ISO26000をベースとしたグローバルで共通のモニタリングシートを使用します。
モニタリングシートの中の各監査項目は、重要性や緊急性によって、「致命的」、「重大」、および「一般」の3つに分類されます。監査項目に適合している場合は、それぞれの分類に設定したポイントを集計することにより数値化して評価を行います。評価指数90以上をA、80~89をB、70~79をC、69以下または児童労働・強制労働が検出された場合をDというように4つの等級で評価しています。
CSR監査と是正の仕組み
サプライヤー所在国によるCSR監査の要否の判断基準
当社は、世界銀行により公表される「世界ガバナンス指標」を参考に、独自の視点も加えて、人権リスクが高いと考えられる国をCSR監査の対象国としています。このため、最新の同指標を参考に毎年レビューを行っています。
同指標を構成する「国民の声(発言力)と説明責任」、「政治的安定と暴力の不在」、「政府の有効性」、「規制の質」、「法の支配」、「汚職の抑制」で上位に位置付けられた国に所在するサプライヤーは、同指標の主旨から監査対象外としています。
日本国内のサプライヤーは、監査対象外であるものの、人権問題が懸念されるケースが散見する外国人技能実習生を雇用するサプライヤーに対しては、監査対象として監査を実施しています。
外国人技能実習生を雇用するサプライヤーに対する監査の状況
2024年4月1日時点で、日本に所在するミズノのサプライヤーは101あり、そのうちの29のサプライヤーにおいて、285人の外国人技能実習生が雇用されています。外国人技能実習生を雇用するサプライヤーのうち、重要なサプライヤーとして監査対象としているのは17で、188人の外国人技能実習生が働いています。
2024年度は4件の監査を実施し、すべてA評価でした。なお、それらのサプライヤーに勤務する外国人技能実習生の国籍は、ベトナム26人、中国5人、カンボジア5人でした。
主なモニタリング内容
当社では、人権、労働慣行、安全衛生、および環境影響の領域に分類してモニタリングを行っています。
2024年度は、下記の表で示した通り、致命的や重大と判定された項目のあるサプライヤーがありましたが、改善・是正に向けての助言・提言を適宜行っています。
「致命的な」および「重大な」不適合の状況(2024年度)
| 分類 | 項目 | 要求事項 | 致命的 | 重大 | 該当するサプライヤーの割合(%) |
|---|---|---|---|---|---|
| 人権 | 結社の自由 | 工場と労働者の代表との労働者の苦情を解決する仕組み | 1社 | 4.5 | |
| 労働者代表の選出方法 | 1社 | 4.5 | |||
| 労働組合の結成の権利 | 2社 | 9.1 | |||
| 奴隷労働/強制労働/移住労働 | 家内労働との契約 | 1社 | 4.5 | ||
| 労働慣行 | 報酬 | 報酬の支払い方法 | 1社 | 4.5 | |
| 労働者の社会保険 | 6社 | 27.3 | |||
| 残業手当 | 3社 | 13.6 | |||
| 賃金明細書 | 3社 | 13.6 | |||
| 労働時間 | 労働時間の記録方法 | 1社 | 4.5 | ||
| 残業時間(労働時間の延長)についての労働当局からの許認可 | 1社 | 4.5 | |||
| 労働時間・残業時間超過 | 10社 | 45.5 | |||
| 労働者の休暇の取得 | 7社 | 31.8 | |||
| 安全衛生 | 化学物質 | 化学物質の安全データシート(SDS) | 2社 | 9.1 | |
| 化学物質へのラベル表示 | 2社 | 9.1 | |||
| 消防 | 建物の安全性に対する証明書/許可証 | 6社 | 27.3 | ||
| 非常口および避難経路 | 2社 | 9.1 | |||
| 消火器 | 2社 | 9.1 | |||
| 消防検査証明書 / 許可証 | 5社 | 22.7 | |||
| 出口および非常口の標識または表示灯 | 8社 | 36.4 | |||
| 消火器、消火栓、火災報知器へのアクセス | 4社 | 18.2 | |||
| 消防訓練 | 3社 | 13.6 | |||
| 非常口の施錠 | 1社 | 4.5 | |||
| 非常口の扉の開放方向 | 3社 | 13.6 | |||
| 寮 | 寮の設置場所 | 1社 | 4.5 | ||
| 労働環境 | 危険な環境に晒される労働者のための定期健康診断 | 4社 | 18.2 | ||
| 定期健康診断 | 1社 | 4.5 | |||
| 個人防護用具(PPE)の支給 | 7社 | 31.8 | |||
| 環境 | 汚染の防止 | 地域コミュニティに対する騒音(境界線上での騒音測定)の監視 | 2社 | 9.1 | |
| 廃ガスの排出の監視 | 3社 | 13.6 | |||
| 廃棄物の保管場所 | 5社 | 22.7 | |||
| 廃棄物の輸送と処分 | 3社 | 13.6 | |||
| 廃水の排出の監視 | 3社 | 13.6 | |||
| 排出された廃水 / 下水の汚染物質の排出限度管理 | 1社 | 4.5 | |||
| 管理システム | 環境に関する認可 | 4社 | 18.2 |
人権に関する不適合の内容
近年、人権意識のめざましい向上により、サプライヤーにおいても従業員の権利を抑圧するような事態はあまり見受けられなくなりました。そのような情勢のもと、2024年度の監査で検出された人権にかかわる事象は5件でした。そのうちの4件は、「従業員の不平や苦情を聞き届ける仕組みや、解消に向けてアプローチするなどのメカニズムの不在」、「従業員代表の選出方法の不備・非合理性」や「従業員組合の結成プロセスへの一部干渉」というものでした。これらは2025年3月末日時点で是正が確認できず、各々のサプライヤーにおいて対処中となっています。また、1件「家内労働者との契約上の不備」が国内で検出されましたが、こちらはすでに是正済みとなっています。是正完了を確認しています。
人権以外の不適合
2024年度の監査で人権以外で不適合が検出された項目は、安全衛生と労働慣行に関してでした。
具体的な事例は下記の表のとおりです。
| 監査項目の分類 | 具体的な不適合事例 | サプライヤー数 | 該当するサプライヤーの割合(%) |
|---|---|---|---|
| 安全衛生 | 機械の可動/回転部分、滑車、ベルト、その他の機械の危険な部分に、適切な保護装置が設置されていない。 | 11社 | 50.0 |
| 労働慣行 | 労働時間・残業時間が法的要求事項を満たしていない。 | 10社 | 45.5 |
| 安全衛生 | 出口および非常口は、標識または表示灯と共に表示されていない。 | 8社 | 36.4 |
| 安全衛生 | 適切な救急処置キットが各工場フロアに配置されていない。 | 8社 | 36.4 |
| 安全衛生 | 危険/有害物質は安全かつ厳重に保管されていない。化学薬品貯蔵所や危険廃棄物貯蔵所の消火設備が適切でない。 | 7社 | 31.8 |
| 安全衛生 | 個人防護用具(PPE)が労働者に支給されていない。 | 7社 | 31.8 |
| 労働慣行 | 労働者が7日間に1日の休みを取れていない。 | 7社 | 31.8 |
| 安全衛生 | 現場の建物が構造的に安全なことが点検されておらず、かつ地方自治体によって発行された証明書/許可証を持っていない。 | 6社 | 27.3 |
| 安全衛生 | 適切な非常灯が各工場フロアに設置されていない。 | 6社 | 27.3 |
| 労働慣行 | すべての労働者に現地の法的要求事項を満たす社会保険が提供されていない。 | 6社 | 27.3 |
不適合項目の是正状況
2024年度に実施したCSR監査において、検出された致命的もしくは重大な不適合項目は51件ありました。そのうち、2025年3月末日時点でそれらの是正を確認できたのは40件(78%)でした。なお、当年度においてCSR監査を実施したなかで、取引継続の要件を満たす評価等級に達していないことを理由に、取引関係を解消した事例はありませんでした。
不適合項目の是正状況は、ESGデータをご参照ください。
二次・三次サプライヤーへの対応
当社は、直接に商品売買の取引関係にある一次サプライヤーに対して、人権、労働、環境影響の把握を行い、必要に応じて改善や是正を要請し、良好なサプライチェーンを築くことを重要課題として取り組みを進めています。
また、当社とは直接の取引関係がないものの、一次サプライヤーに原材料や部品・半製品を納めたり、労働力を提供したりする二次・三次サプライヤーについても、懸念される事項がないか察知するべく、一次サプライヤーを通じて情報収集に努めています。
このような状況のもと、2017年度から二次・三次サプライヤーに監査の対象を広げました。ゴルフクラブのアイアンヘッドのメッキ加工や、野球グラブやシューズに使用する皮革のなめし加工などを取り扱うサプライヤーが主な対象となります。
年度ごとに対処した内容は下記のとおりです。
| 年度 | 監査内容 |
|---|---|
| 2017 | ゴルフの部品製造のサプライヤーを2件監査しました。部品製造以外の二次・三次サプライヤーである日本の金属加工とタイの生地染色加工の製造現場の実情を把握するため、現地に赴き視察をしました。 |
| 2018 | 中国のゴルフクラブの部品製造、ゴルフクラブのメッキ、ベトナムの皮革なめし、シューズのアッパー(甲被材)製造、シューズのゴム底製造の各サプライヤーのCSR監査を実施しました。 |
| 2019 | ゴルフクラブの部品製造、シューズの甲被材・ソール製造の各サプライヤーを監査しました。そのうち、ゴルフの部品製造、ソール製造、および甲被材加工の各サプライヤーの監査で不適合となる事象を検出しました。 |
| 2020 | 2018年度および2019年度に不適合が検出されたサプライヤーの追跡監査を実施したところ、不適合項目は是正されていることを確認しました。また、ゴルフクラブ製造のサプライヤーの監査を実施しました。 |
| 2022 | ゴルフクラブの部品製造のサプライヤーを監査したところ、不適合となる事象を検出したため、2023年度に追跡監査を実施することとしました。 |
| 2023 | 2022年度の監査で不適合となる事象を検出したゴルフクラブの部品製造のサプライヤーを追跡監査したところ、是正されたことを確認しました。
アパレル、フットウエア、エキップメントの二次・三次サプライヤーの取引状況および今後の監査の要否のため、状況を確認しました。それに基づき、2024年以降の管理方法の検討を行いました。 |
| 2024 | 米国子会社による製品の調達に関し、米国関税法およびウイグル強制労働防止法への対応として、同社の調達先の1~3次サプライヤーの調査を行いました。その結果、米国税関が輸入を禁止するサプライヤーからは調達していないことを確認しました。 |
※ 2021年度は新型コロナウイルス感染防止のため監査を実施できませんでした。
CSR監査以外の活動
現在、当社のサプライヤーの多くが所在する東南アジアでは、現地の急速な経済成長を背景として、これまで以上に環境問題や労使紛争などが起こりやすい状況になっています。
このような社会の変化が進展する状況下では、CSR監査における不適合項目の是正だけでは、根本的な人権・労働・環境問題の解決は困難になっています。
そのため、今後はCSR監査以外の活動として、サプライヤーのキャパシティ・ビルディング(組織の能力向上)へのウエイトを高めていく必要があると考えています。
その前提として、社内向けの教育に従来に増して力を入れています。グループ全社員を対象とする広汎で一般的な内容のものから、役員や管理職、海外事業所に派遣される社員に向けた特定の問題やテーマに注目したものなど、各種各層にそったプログラムに基づいて啓発を行い、CSR調達の意義や重要性について理解や認識を高められるよう努めています。そのような中、2024年度は米国子会社の社員に対して、サプライヤーに向きあうブランドの立場として、その果たすべき役割についてディスカッションを行いました。
さらに、「ビジネスと人権」に関して、各業種・各方面の企業に向け課題解決を支援されておられる 塚田智宏弁護士(森・濱田松本法律事務所 外国法共同事業)より、ミズノの取り組み事例について取材を受けました。その内容は、経済と法律を架橋する雑誌「NBL(New Business Law)」(株式会社商事法務刊)における連載企画「『ビジネスと人権』実務から理解する取組のエッセンス」において、連載第1回の記事として掲載されました。
児童労働の禁止に向けた取り組み
アパレルやシューズなどのスポーツ品は、労働者の賃金水準が相対的に低いアジア太平洋地域で生産されています。今後さまざまな理由により、児童労働が増加するおそれがあると指摘されています。そのため、児童労働を監査項目の中でも最重要視し、サプライヤーの多くが所在するアジア太平洋地域で、児童労働に対する一層の監視が必要と考えています。
「児童労働を行わない」ということを「ミズノ倫理規範」に明記し、「ミズノCSR調達行動規範」において、国際労働機関(ILO)の定める中核的労働基準8条約の中の「就業が認められる最低年齢に関する条約」(第138号)、および「最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約」(第182号)を尊重することをサプライヤーに要求しています。
また、児童労働が起こりうるおそれが大きい国や地域を把握するため、前述の「世界ガバナンス指標」を活用し、監査が必要な国と不要な国を分類しています。
人権尊重への対応について
アジア太平洋地域では、児童労働とあわせて強制労働(いわゆる「現代奴隷」)にも、十分な監視の目が必要と考えています。わが国日本においては、2024年10月末の厚生労働省の調べで、外国人労働者は約230万人(そのうち技能実習の外国人労働者は約47万人)、外国人労働者を雇用する事業所数は約34万所と報告されています。当社が製品を調達するサプライヤーの多くは、外国人技能実習制度を利用して外国人を雇用しています。
その外国人技能実習生の取り扱いが、人権面や労働条件面で問題があると社会問題になっており、外国人技能実習生を雇用するサプライヤーを監査対象に、CSR担当者が直接訪問して監査を行っています
また、「責任ある外国人労働者受け入れプラットフォーム(JP-MIRAI)※」のメンバーとして、国際水準を満たす「プラットフォーム行動原則」にそって、雇用主等が外国人労働者の受け入れに責任を果たせるよう一助となりたいと考えています。
※ JP-MIRAIは、外国人労働者に暮らしや就労に役立つ情報提供や相談支援を行っています。外国人労働者を雇用する企業等向けには、CSR監査を補うのに有効な手段の1つである苦情処理メカニズム(「グリーバンス・メカニズム」)の運営など、サプライチェーンの潜在的問題の早期発見に役立つ仕組みや情報を提供しています。
海外諸法令への対応
当社は、人身売買や奴隷労働を排除する取組みを開示するよう企業に求める各国・各地域の法令に対応しています。米国の「カリフォルニア州サプライチェーン透明法」(2012年施行)や英国現代奴隷法(2015年施行)などの人権尊重の法制化に対応した情報を開示しています。
「英国現代奴隷法」に対する表明
ミズノの英国現代奴隷法2015 に対する表明(ステートメント) FY 2024
ミズノの英国現代奴隷法2015 に対する表明(ステートメント) FY 2023
ミズノの英国現代奴隷法2015 に対する表明(ステートメント) FY 2022
ミズノの英国現代奴隷法2015 に対する表明(ステートメント) FY 2021
ミズノの英国現代奴隷法2015 に対する表明(ステートメント) FY 2020
ミズノの英国現代奴隷法2015 に対する表明(ステートメント) FY 2019
ミズノの英国現代奴隷法2015 に対する表明(ステートメント) FY 2018
ミズノの英国現代奴隷法2015 に対する表明(ステートメント) FY 2017
紛争鉱物に関する取り組み
紛争鉱物(Conflict Minerals)とは
紛争鉱物とは、コンゴ民主共和国(旧:ザイール)や周辺のアフリカ諸国の紛争地域で採掘された鉱物資源のことを言い、脅迫や暴力によって住民や連行されてきた人々が強制的に採掘作業に従事させられ、深刻な人権侵害を引き起こしています。また、そのように採掘された鉱物は、武装勢力や犯罪組織の資金源になっていることから、非常に大きな問題となっています。紛争鉱物を規制する取り決めとしては、第一に米国の「金融規制改革法(ドッド・フランク法)」が挙げられます。同法(第1502条)では、錫(すず)、タンタル、タングステン、金の4物質(総称して「3TG」)を規制対象の鉱物資源と定義しています。米国に上場している企業は、これらを使用した製品を製造もしくは(製造委託を含む)しているかどうか、使用している場合はその状況について、米国証券取引委員会(SEC)に報告するとともに、それらの情報をホームページ等で開示することが義務づけられています。
紛争鉱物に関する取り組み
米国証券市場に上場していないため、SECへの報告と開示の義務はありませんが、サプライチェーンの透明性を確保することが責任ある調達につながると考え、2018年からドッド・フランク法の規制対象である鉱物資源(3TG)の使用状況について調査を開始しました。
具体的には、タングステンはゴルフクラブのヘッドやソフトテニスラケットの重量バランスのための錘(おもり)、野球の超硬スパイクの歯先に使用されています。また、錫や金は各種金属製品のメッキに使用されています。これらの鉱物資源について、紛争地域から調達されたものではないことを確認しています。
なお、2022年以降、ゴルフクラブのヘッドに使用されているタングステンについては、「RMI(Responsible Minerals Initiative)※」が提供する統一の調査票(「CMRT:Conflict Minerals Reporting Template」)に基づき調査を実施し、全ての精錬所を特定しています。さらに、それらの精錬所が、RMIの「Conformant Tungsten Smelters(適合タングステン精錬所リスト)」に登録されていることも確認しています。
RMIの認証精錬所リストに登録されている精錬所とは、「RMAP(Responsible Minerals Assurance Process)」監査で、紛争鉱物の調達管理のプロセスにおいて違法がないことが確認された精錬所であることを意味します。
また、CMRTを使用した調査と並行して、ゴルフのタングステンについて精錬所までのトレーサビリティを実施してサプライチェーンマップを作成、タングステンの調達経路の透明性を確保するとともに、適合精錬所以外の鉱物を使用することのないよう取引先に要請しています。
※ 2008年に設立され、400社を超えるメンバー企業が加盟する組織。
サプライチェーンにおける責任ある鉱物調達に対応するためのツールやリソースを開発しています。
今後の課題
事業の発展・伸長にともない、商品の安定供給のリスクも増大してまいります。安定的な商品供給を維持するには、特定の国やサプライヤーへの依存度を下げるべく生産拠点の分散が不可欠であり、新たな国や地域に所在するサプライヤーからの調達が一層増えることが予想されます。従って、新規のサプライヤー候補に対しては、事前評価を含め、これまでに増して確実かつ精緻に対応することが求められます。
さらに、CSR調達監査による定期的なモニタリングを通じて、監査で検出された問題が是正され、後戻りしないことが重要であると考えています。今後も責任ある調達を実行すべく、サプライチェーンの適正性の確保に引き続き取り組んでいきます。