スポーツの力で社会課題解決に貢献するイノベーションをさらに創出し、ミズノグループの持続的成長と企業価値向上を目指します。

ミズノグループは、1906年の創業以来「より良いスポーツ品とスポーツの振興を通じて社会に貢献する」という経営理念を掲げています。これは今後も変わることのない軸であり、すべてのステークホルダーに向けたミズノのパーパス(存在意義)です。過去3年間にわたり新型コロナウイルス感染症は人々の暮らしに多大な影響・制約をもたらしましたが、その中で、この3年間はスポーツの持つ力・素晴らしさを改めて認識した期間でもあり、当社グループの事業の意義をさらに強く感じました。

感染症対策での行動制限は世界各国で段階的に緩和され、日本国内においては、2023年5月に感染症法上の分類が見直されました。これからは社会経済活動の正常化に向けた動きが加速すると予想されます。無観客で開催されていたスポーツイベントにも観客が戻り、声を出しての応援も可能になりました。特に世界中の多くの人々の関心を集め、記憶に新しい国際大会は、2022年11月から12月にかけて開催されたサッカーの世界大会や2023年3月に行われた野球の世界大会ではないでしょうか。これらの世界大会における日本代表の活躍は、私たちに大いなる感動・興奮・希望を与えてくれました。そして当社グループの製品群が選手たちの素晴らしいパフォーマンスを陰で支えたことは、ミズノの創業の原点に立ち返り、私にとっても非常に感慨深い大会となりました。

当社グループでは、近年、スポーツで培った知見を生かし、高齢社会や気候変動適応の製品・サービス開発にも取り組んでいます。そして、スポーツの力で社会課題解決に貢献するイノベーションをさらに創出していくため、大阪本社ビルの隣に新しいイノベーションセンター「MIZUNO ENGINE(ミズノエンジン)」を建設し、2022年11月から本格稼働を開始しました。「MIZUNO ENGINE」設立においては、コンセプトづくりの段階からいろいろな部門や年代の社員が集まって自由に意見を出し合い、「常に変化・進化し続ける場所にしたい」と考えてきました。スポーツの定義を競技シーンだけでなく、日常生活シーンにおける身体活動にまで広げて、最先端の機材や測定機器を導入し、科学的なデータを取りながら製品開発のサイクルをアジャイルに進め、高付加価値な製品・サービスを世に送り出していきます。

当社グループは、1991年から宇宙船地球号の乗組員(Crew)としての役割を果たすという思いを込めた地球環境保全活動「Crew21」を開始して以降、30年以上にわたって事業活動に伴う環境や社会への影響を低減するため、企業の社会的責任としてCSR活動を積極的に進めてきました。コロナ禍を経て、気候変動や人権などサステナビリティを取り巻く社会課題の重要性はさらに高まってきていると感じています。さまざまなリスクの高まりは、欧州を中心とした消費者の購買意識に大きな変化をもたらすとともに、株主・投資家の皆さまの投資行動にも影響を与えてきています。環境配慮型製品の開発や、資源の有効活用、調達先企業に対するCSR調達など、今後も継続して取り組みを強化していきます。そのうえで私は、ビジネスに伴う責任ある企業行動をベースにしたサステナビリティ活動はコストと捉えるのではなく、経営戦略と一体となって積極的に投資を進めることで、ブランド価値や企業価値を高めることにつながるとも考えています。

不安定さを増す国際情勢、デジタル技術の発展に伴う人々の行動や価値観の変化など、私たちを取り巻く環境は以前にも増して不透明な状況が続きます。この先、長期的な社会の変化を見通すことは難しく、価値観や考え方などががらりと変わる可能性もあります。企業は、時代の変化に対応できる柔軟な適応力が求められると考えています。今後も当社グループの成長を実現していくためには、従業員の一人ひとりが活き活きと働くことによって、ステークホルダーの皆さまに提供する社会的価値を最大化し、利益を向上させていくことがもっとも重要だと考えています。そのため、事業競争力をもたらす従業員個人の成長を促す人財育成と、会社と従業員のより良い関係性を構築する従業員エンゲージメント向上を人的資本戦略の軸として取り組みを強化していきます。

当社グループは、これからもスポーツの価値を追求することにより平和で持続可能な社会が実現し、その結果としてミズノブランドが着実に成長していくことを目指していきます。そして、スポーツ品の提供という幹を太くしながらも、より快適な日常生活や労働環境を提案する製品やサービスなど、枝葉をその時々に応じて広げていきながら、持続的成長と企業価値向上を実現していきます。
今後もステークホルダーの皆さまの一層のご支援を賜りますよう、よろしくお願いいたします。

ミズノ株式会社 代表取締役社長

水野明人