効率的に筋肉を保温するウエア設計による生理的影響の研究を実施
スポーツや運動において、急激に体が冷えてウォームアップやリカバリがうまくいかなかったことはありませんか。ミズノでは、生命活動を維持する上で重要な役割を果たしている筋肉の「温度」に着目し、主要な筋肉を温めるウエア設計による生理的影響の研究をしました。
これまでウエアの保温性は、体温を維持して快適性を向上させることが目的でした。しかし今回は、快適性に加えて身体のパフォーマンス向上やリカバリに寄与するウエアが作れないかという視点で体のメカニズムを分析。すると、「筋肉の温度(以下筋温)」が上昇すると細胞が活性化し、筋パフォーマンスの向上と筋肥大による効率的なリカバリに繋がる可能性があることがわかりました。
筋パフォーマンスの向上
以前から筋肉を温めることによる副次的な効果について研究されていた豊橋創造大学(愛知県豊橋市)の後藤勝正教授と、表層筋を温めることが即時的なパフォーマンスにどんな影響を及ぼすかについて共同研究を行いました。
共同研究における実証実験では、上腕⼆頭筋や上腕三頭筋、⼤胸筋といった大きな表層筋に保温素材としてミズノ独自の吸湿発熱素材ブレスサーモを配置し、それ以外の部分には通気性や汗処理性に優れた素材を用いた身体に密着するタイプの長袖ウエア(効率的に筋肉を保温するウエア)を使用しました。また、同様に下肢も大腿四頭筋や腓腹筋といった下肢にある大きな表層筋、ハムストリング部などにブレスサーモを配置し、それ以外の部分に通気性や汗処理性に優れた素材を用いた身体に密着するタイプの長タイツ(効率的に筋肉を保温するウエア)を使用しました。
実験結果から、運動やトレーニング後、上肢、下肢ともに効率的に筋肉を保温するウエアを着用して筋肉を温めることが「反応時間」「動作時間」「動作の効率性」など、パフォーマンスにおける即時効果があるという可能性が示唆されました。このメカニズムは、アスリートのパフォーマンス向上だけでなく、高齢者の方々の筋力や筋肉量の減退に伴う身体機能低下リスクを軽減することにも繋がる可能性があると考えられます。
筋肥大による効率的なウォーミングアップや休息リカバリ
スポーツ内科学について研究されていた福岡大学スポーツ科学部(福岡県福岡市) 兼 福岡大学病院医師の上原教授と運動中や運動後の休息時の筋温の低下を抑制することで筋肥大に対してどのような影響を及ぼすかについて共同研究を行いました。
実証実験の結果、トレーニング時に主要な筋肉を保温するウエアを着用することで、トレーニング後の筋肉が保温されていることが確認できました。さらに数週間の継続着用により、マイオカインと呼ばれる筋肉の合成や修復に関わる血液成分であるIL-6(インターロイキン-6)が増加し、筋肉の厚みが増加することもわかりました。よって、トレーニング後に効率的に筋肉を保温するウエアを着用し続けることで、筋肥大を促し、効率的なウォーミングアップや休息リカバリに繋がる可能性があることがわかりました。
効率的に筋肉を保温するウエアは、スポーツシーンだけでなく、休息時にも効果的な新設計と言えます。今後もミズノはさらに研究を深め、アスリートの競技パフォーマンスや一般生活者の健康の維持に貢献できるウエア開発に挑戦していきます。