ランニングエコノミーを高めるタイツ「MIZUNO BIOGEAR SONIC LD」の開発

ランニングエコノミーを高めるタイツ「MIZUNO BIOGEAR SONIC LD」の開発

駅伝やマラソンといった長距離走選手はもちろん、趣味でランニングに取り組んでいる人も「少しでも速く走りたい」という欲求は尽きることがありません。しかも「厚底シューズ」の登場により、あらゆる層のランナーの意識の中に「身につければ速く走れるアイテムがある」という考えが芽生えつつあります。
ランナーのスタイルは従来のランニングパンツ&ランニングシャツから、最近はランニングパンツの代わりにハーフタイツを履くスタイルが普及しつつあります。しかし「履けば速く走れるようになるタイツ」は、まだ存在していませんでした。

長距離走のパフォーマンスは、最大酸素摂取量、乳酸性作業閾値、ある速度をいかに少ないエネルギー消費量(酸素消費量)で走ることができるかを示すランニングエコノミーの3要素で決まるとされています。その中でランニングエコノミーは、体の動かし方を改善することで変化する唯一のパラメータです。これを改善することは持続可能な最大走速度を上げることとなり、結果的にタイムを縮めることになります※1

※1 “How biomechanical improvements in running economy could break the 2-hour marathon barrier” Sports Med. 2017 Sep;47(9):1739-1750. by Hoogkamer W, Kram R, and Arellano CJ.

そこでミズノでは、ランニングエコノミーを高めるタイツの開発に着手。3つのアプローチで開発、製品化を成功させました。

1.「温故知新」の設計開発

部分的に衣服圧を高める技術で効果的に筋肉の揺れを抑制し、ランニング時の筋肉の負担を軽減させる「筋振動抑制」設計。体幹の安定と骨盤前傾の保持により、走りの安定性を高め、効率のよいランニングフォームを実現する「骨盤サポート」設計。タテヨコによく伸びる生地と特許接着技術により、縫製する部分を少なくしつつサポート力を持たせたサポートと動きやすさの両立。ミズノには、長年の研究開発による数多くの設計や技術・ノウハウが蓄積されており、今回はその知見を活かし、設計開発に取り組みました。

2.機能を科学的に証明

被験者として大学生ランナー18名に協力していただき、機能性に関する科学的な検証を行いました。その結果、タイツを装着するとランニング時の酸素消費量が約2.4%減少することを確認(トレッドミル16km/hでの走行時)しました。この結果は、10kmを30分00秒で走れるランナーであれば、理論上※2は10kmを約29分27秒で走りきれる計算になり、約33秒の記録短縮となります。

※2 以下論文に示される方程式 V ̇O_2 ((mL O_2⁄kg)⁄min)=5.7+9.8158V+0.0537V^3 に従って計算を行いました。V ̇O_2は酸素消費量、Vはランニング速度(m/s)を示しています。 この方程式はケニア人マラソンランナー10名が標高2000m以上の高地で走った際に計測されたデータに基づき導出されています。約33秒の記録短縮はあくまで計算上の数値であり、実際に速く走れることを保証するものではありません。
“A Comparison of the Energetic Cost of Running in Marathon Racing Shoes” Sports Med. 2018 Apr;48(4):1009-1019. by Hoogkamer W, Kipp S, Frank JH, Farina EM, Luo G, and Kram R.

3.大学駅伝ランナーとの共創

最終的な製品仕様の決定には、大学駅伝チームの選手へのモニターとヒアリング、アンケートを繰り返し実施しました。累計100名以上の選手からのフィードバックをもとに骨盤サポートの締め付け力や筋振動抑制の締め付け力、縫製する位置の調整を何度も行い、駅伝選手も納得できる完成度の高い商品に仕上げました。

上記のような開発アプローチで完成した製品は、2021年8月に「MIZUNO BIOGEAR SONIC LD(ミズノバイオギアソニックエルディー)」として発売されて好評を博し、2022年8月にはセカンドモデル「BIOGEAR SONIC EVO(バイオギアソニックエボ)」が発売されました。

BIOGEAR SONIC EVO
品番:U2MB2531

BIOGEAR SONIC EVO EKIDEN MODEL
品番:U2MB2530

箱根駅伝では、2021年に2名の選手が着用したことを皮切りに、2023年は9名(タイツ着用者の中では最多)に増加、さらに2022年の全国高校駅伝では男子11名、女子5名の選手が着用しました。駅伝選手の着用者数増加は「MIZUNO BIOGEAR SONIC LDを履けば速く走れる」ことを実感しているからと考えています。
2023年8月にはニューカラーを発売するなど、今後も「MIZUNO BIOGEAR SONIC LD」を進化させていきます。
これからもミズノは、より良いスポーツ品を提供することで、スポーツシーンを支えてまいります。