暑熱リスクの高まる環境下のパフォーマンスを支える素材「DRY AEROFLOW」
近年、地球温暖化により世界的な平均気温上昇が続く中、スポーツ界でも体温上昇や脱水といった暑熱トラブルにより、選手がパフォーマンスを最大限発揮できない状況が増えています。この暑熱トラブルを回避するには、発汗という体温調節のためのメカニズムを活用し、汗が乾く時に体から熱を奪う作用を利用して放熱性を高めることが重要です。
従来のウエアは、通気性や吸汗性を高めることで汗を処理して選手のパフォーマンスを支えていましたが、大量発汗状態になると生地が汗を吸えなくなり、すでに吸った汗を乾かすこともできなくなります。また生地表面上に発生した汗の膜で通気性が低下するため、汗の乾きづらさや衣服内に熱がこもるといった不快感が生じていました。
そこで汗による熱放散を高めることで選手のパフォーマンスをサポートする素材「DRY AEROFLOW(ドライ エアロフロー)」を開発しました。
1.「DRY AEROFLOW」の機能コンセプト
「DRY AEROFLOW」は、大量発汗時でも汗の膜の発生を抑制することで通気性を確保します。それと同時に皮膚上の汗の気化を促進して汗による熱放散を高めることでクーリング効果や快適性を向上させ、選手のパフォーマンスをサポートします。
この素材は、生地のメッシュ部の周囲や一部に保水量を抑える疎水性・撥水性素材を配置することで、汗などの水分を生地の外へ逃がして通気性を保ちます。加えて、生地に吸水性素材を配置することで汗を吸収・拡散し、肌上の汗を気化しやすい状態に整えることができます(日本および海外6カ国で特許取得済み)。
2.湿潤時の通気性能の検証
「DRY AEROFLOW」の通気性能も科学的に検証を行っています。
「DRY AEROFLOW」とミズノ製の従来生地を水槽内に一定時間浸し、大量発汗時のウエアのような湿潤状態を再現し通気性能を測定しました。
その結果、両者を比較すると、乾燥時の通気性は同等ながら湿潤時では「DRY AEROFLOW」が従来生地の乾燥時と同等の通気性を示しました。これにより「DRY AEROFLOW」は高い通気性を保っていると言えます。
3.共同研究で「DRY AEROFLOW」と運動パフォーマンスの関係を科学的に検証
「DRY AEROFLOW」の通気性が大量発汗した選手にどのような効果をもたらすかについて、広島大学の長谷川博教授と共同研究を行い、科学的な検証を行いました。
大学生のサッカー選手16名のうち、8名が従来生地のウエアを、8名が「DRY AEROFLOW」生地のウエアを着用してサッカーのミニゲームなどを行い、体重変化率から算出した脱水率などを測定しました。すると脱水率は「DRY AEROFLOW」が約0.5%低いことが確認できました。脱水率が2%以上になると持久的パフォーマンスが、3%以上になると瞬発系のパフォーマンスが低下するとされている中、約60分強の運動で約0.5%の差が生じたのは大きな意味があると考えられます。
この結果から「DRY AEROFLOW」は、脱水率の上昇を抑えることで選手の暑熱トラブル発生リスクを抑制し、結果的に選手のパフォーマンス発揮のサポートになると言えます。
また、「DRY AEROFLOW」は、冷却効果を付与した「DRY AEROFLOW COOLER(ドライ エアロフロー クーラー)」、生地上の汗もすぐに乾く機能を備えつつ赤外線防透け性も向上させた「DRY AEROFLOW RAPID(ドライ エアロフロー ラピッド)」など、機能性をさらに付加した商品の展開も行っています。「DRY AEROFLOW」は2021年に東京で開催された世界大会で複数種目の日本代表のゲームウエアに採用されました。また、「DRY AEROFLOW RAPID」は、2024年にパリで開催される世界大会で、複数種目の日本代表のゲームウエアに採用されています。
これからもミズノは、選手のパフォーマンスをサポートする「DRY AEROFLOW」のようなよりよいスポーツ品の提供を通じて、スポーツシーンを支えてまいります。