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地球環境に配慮した新素材による人工芝の開発

近年、使用済みプラスチックが自然環境に流出した結果、最終的に海に流れ着いて海洋プラスチックごみになることが世界的な社会課題となっています。
スポーツ施設では、2000年以降、長い人工芝葉の間にゴムや樹脂などのプラスチック製充填材を充填するタイプの製品が開発され、世界中で使用されるようになりました。日本でも耐久性やプレー性の向上を理由に、延べ2,000万平方メートル以上の面積に敷設されています。しかし、これらのプラスチック製品も施設外に流出し、海洋プラスチックごみの一因になっているという検証結果が存在しています。
そこでミズノでは万が一、人工芝葉が海に流出しても海洋プラスチックごみにならないことを目指し、株式会社カネカとの共創により海洋生分解性樹脂を使用した屋内用の人工芝を開発しました。

開発のポイント

顧客ニーズ

スポーツ施設では、プラスチックの施設外流出を防ぐための設備を導入するケースが増えています。しかし、完全な流出防止は困難であり、新たな対策が求められていました。 充填材に関しては、ヤシガラやコルクなどの天然素材を用いた製品も存在しますが、プレー性や耐久性がプラスチック製品より劣る場合が多く、普及は限定的です。また、人工芝葉についてはスポーツ用途に適した天然素材製品は存在していません。

新素材の採用による共創

スポーツ施設外への流出が避けられないのであれば、海に流出しても海洋プラスチックごみの要因にならない素材で製品化しようと考えました。そこで、開発当初から生分解性樹脂に着目していたものの、「柔軟性がない」、「海中では分解しない」などの理由から、人工芝素材としては不適と判断していました。
そんな中、海水で水と二酸化炭素に生分解するカネカ生分解性バイオポリマー Green Planet®※1の存在を知り、ミズノから開発元の株式会社カネカに人工芝の共創を打診。快諾を得て2021年から共同開発がスタートしました。

※1 カネカが開発したバイオマス由来の生分解性バイオポリマー

Green Planet

共創プロセス

開発当初は施設外への流出量が多い充填材の開発から始まりましたが、「やはり人工芝といえば葉の部分だろう」という強い想いから、両社にとって初の試みとなる人工芝葉の開発を先行して挑戦することを決断しました。
開発初期は、現行のプラスチック製人工芝葉に近い形状は作れたものの、耐久性に課題がありました。そこで、樹脂配合を繰り返し調整しながら試作と検証を重ねた結果、生分解性樹脂を素材としながらもプラスチック製の現行品と遜色ない耐久性とスポーツ性能を備えた人工芝葉と充填材の開発に成功しました。
現在は、屋外で使用出来る人工芝や景観用人工芝の開発にも取り組んでいます。

Green Planet

今後の展開

今後、競技場などで用いられるスポーツサーフェスは、高い耐久性や高いパフォーマンスに加えて、高い環境性能が不可欠になると考えます。
「環境配慮型」を掲げる製品は数多くありますが、その多くは一部の環境指標にしか対応していません。この点において本製品は、海洋プラスチックごみ対策やGHG(温室効果ガス)排出量削減、石油使用量削減など、複数の環境課題に対応できる高次元の環境対応型人工芝としてご提案が可能です。

1991年9月に地球環境保全活動を開始し、ミズノは30年以上にわたって二酸化炭素排出量や廃棄物の削減、リサイクルの推進などに取り組んできました。今後も、革新的な技術を持つ企業との共創を通じて地球環境を守る新たな製品や素材を創造し、世界中に届けてまいります。

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