和紙グラブ全体

新しい素材や形状の可能性にチャレンジした「和紙グラブ」の開発

ミズノはさまざまなスポーツ用品を開発しており、研究開発部門では未知の可能性を追求するため、通常とは異なる素材でスポーツ用品を作る取り組みにも挑戦しています。今回は野球グラブの製作を、和紙を使ってチャレンジしました。

長年素材や形状の変化が少なく、多様で難しい製造工程が多い野球グラブだけに、異なる素材で作るだけでも相当な困難が予想されます。当初はリサイクル生地などを検討した結果、材料として意外性のある日本古来の越前和紙を使った野球グラブ作りにチャレンジすることにしました。

チャレンジの第一歩として、まずは野球グラブとして使えるかどうかは考えず、普通のグラブと全く同じ工程で製造し、誰が見ても野球のグラブと感じられるものを作ることをめざしました。
最初は素材開発に取り組みました。協業先の越前和紙のメーカーや職人とミズノのグラブ開発メンバーが協業し、グラブの複雑な形状をつくる上で必須となる「縫う」「裏返す」「重ねる」「紐を通す」といった作業ができるよう和紙を改良。続いてグラブ製造スタッフが、和紙を現状の野球グラブと同じ各パーツ形状にカットや加工を行い、試作に取り組みました。

和紙自体にしなやかさはあるものの、やはり天然皮革に比べると強度は低く、紙紐を通した穴から破れてしまうなど、製造工程の中でさまざまな困難が生じました。しかし、越前和紙職人とグラブ開発メンバーと製造スタッフがそれぞれの経験や工夫、技術を生かしたり、お互いの技術を融合するなどしてその困難をクリアし、魅力的な和紙製のコンセプトグラブを作りあげることに成功しました。現時点ではあくまでもコンセプトグラブなので従来の野球グラブと同等の使用を求めるには難しい面もありますが、さらなる改良、アイデアを加えることにより十分にグラブとしての機能を果たしてくれるものになると考えます。

今回は、グラブの役割を「ボールを取る」にフォーカスすれば現状の素材や形状に拘らなくてもさほど問題がないことを再認識できました。これにより野球グラブの材料や形状など、従来は当たり前と考えていた部分にも今後の革新が期待できると実感しました。

今後は今回得た経験や知識を糧とし、「新素材の発掘や開発」や「革新的なグラブ形状の開発」といった「あらゆる固定概念を排除し、その可能性を見える化する」ためのチャレンジを続けると同時に、より多くの皆さまにミズノのイノベーションを伝え、感じていただくことをめざします。