ミズノはさまざまなスポーツ用品を開発しており、研究開発部門では未知の可能性を追求するため、通常とは異なる素材でスポーツ用品を作る取り組みにも挑戦しています。今回は野球グラブの製作を、和紙を使ってチャレンジしました。

長年素材や形状の変化が少なく、多様で難しい製造工程が多い野球グラブだけに、異なる素材で作るだけでも相当な困難が予想されます。当初はリサイクル生地などを検討した結果、材料として意外性のある日本古来の越前和紙を使った野球グラブ作りにチャレンジすることにしました。

デジタル技術の普及により、人々の暮らしは格段に便利になりました。ただ、人間の身体的な性質は、約1万年前の狩猟時代からほとんど進化していないと言われています。しかし近年、テクノロジーの進化により人間の能力を進化、増強させる技術や考え方として「人間拡張(Human Augmentation)」が注目を集めています。

ミズノでは、スポーツで社会を変える研究開発ビジョンとして『MIZUNO MIRAI VISION』を定めており、これは私たちの強みと価値、つくりたい未来を表したものであり、製品やサービスを生み出すための指針となるものです。また、楽しく体を動かすことのすべてをスポーツととらえ、スポーツで人と社会を幸せにすることを使命として、ミズノならではのコアバリューとコアテクノロジーを定義しています。
ミズノは現在、この『MIZUNO MIRAI VISION』に基づき研究開発を進める中で、「人間拡張」分野にも挑戦しています。

駅伝やマラソンといった長距離走選手はもちろん、趣味でランニングに取り組んでいる人も「少しでも速く走りたい」という欲求は尽きることがありません。しかも「厚底シューズ」の登場により、あらゆる層のランナーの意識の中に「身につければ速く走れるアイテムがある」という考えが芽生えつつあります。
ランナーのスタイルは従来のランニングパンツ&ランニングシャツから、最近はランニングパンツの代わりにハーフタイツを履くスタイルが普及しつつあります。しかし「履けば速く走れるようになるタイツ」は、まだ存在していませんでした。

長距離走のパフォーマンスは、最大酸素摂取量、乳酸性作業閾値、ある速度をいかに少ないエネルギー消費量(酸素消費量)で走ることができるかを示すランニングエコノミーの3要素で決まるとされています。その中でランニングエコノミーは、体の動かし方を改善することで変化する唯一のパラメータです。これを改善することは持続可能な最大走速度を上げることとなり、結果的にタイムを縮めることになります※1

近年、ゴルフクラブの技術革新は目覚ましく、ミズノでもさまざまな開発に取り組み、飛びを追究したドライバーを発売してきました。2023年3月に発売したST-230シリーズには、『CORTECH CHAMBER(コアテックチャンバー)』という新たな基幹機能を搭載しています。この『CORTECH CHAMBER』の最大の特長は、TPUに内含されたステンレスパーツが、効率よくボールの初速を上げ※1、スピン量を低下※1させることです。結果、飛距離を伸ばすことに成功しました。
さらに特筆すべきは、新たな基幹機能である『CORTECH CHAMBER』が、ゴルフクラブ開発チームとミズノ社内のさまざまな部署が共創し、誕生したという点です。

※1 当社従来品との比較

製品の視覚的なデザインは消費者の購買意欲に大きく影響します。しかしこれまで、デザインの狙いが消費者に適切に伝わっているかどうかを評価することはあまり行われていませんでした。今回ミズノは、デザインの新しい評価手法に挑戦しました。

まず2023年、ミズノは反発性能が向上※1し、より大きな飛距離を可能にする※2『CORTECH CHAMBER(コアテックチャンバー)』という革新的な基幹機能を搭載したゴルフクラブ(ドライバー)を発売しました。この革新的なテクノロジーを最大限に訴求するため、『CORTECH CHAMBER』が搭載されたエリアにゴルファーの視線を引きつけ、試打してみたくなる魅力をプロダクトのビジュアルで創出することが、デザイナーのミッションとなりました。

※1 ※2 当社従来品比較。効果や感じ方には個人差があります。

ミズノのものづくりは、工場が所在する地域の方々とのつながりに大きく支えられています。国内グラブ生産拠点である波賀工場(ミズノテクニクス株式会社波賀工場)が位置する兵庫県宍粟(しそう)地域は、豊かで美しい水流を誇る揖保川沿いに位置しており、伝統的な地場産業として皮革産業が有名な地域です。ミズノは、地域や人々との大切なつながりを背景とする『地産地消』をテーマに、新たな生産モデルに挑戦しました。
今回誕生した「宍粟牛グラブ」は、国内グラブ生産拠点である波賀工場がある宍粟地域を舞台に、宍粟地域で育った国産和牛の皮革を使い、波賀工場で製作された地産地消グラブです。

一般的に日本国内で生産されている野球用グラブは、海外から輸入した上質な牛革を用いますが、今回のプロジェクトで使われているのは、兵庫県宍粟市にある岸本牧場で食用として丁寧に育てられたブランド牛「宍粟牛」の皮。食用牛では、本来廃棄される副産物の「皮」を宍粟地域の職人たちの技術と情熱で「革」に加工し、初めてグラブ素材として使用しています。

近年、野球はデータをもとにした科学的アプローチによる動作分析や選手育成がスタンダードになりつつあります。ミズノは、2021年4月にアメリカのスタートアップ企業「Blast Motion(ブラスト モーション)社」との協業を発表し、日本で野球のスイング解析や分析を可能にする「BLAST BASEBALL(ブラスト ベースボール)」の販売を開始しました。

スポーツや運動において、急激に体が冷えてウォームアップやリカバリがうまくいかなかったことはありませんか。ミズノでは、生命活動を維持する上で重要な役割を果たしている筋肉の「温度」に着目し、主要な筋肉を温めるウエア設計による生理的影響の研究をしました。

これまでウエアの保温性は、体温を維持して快適性を向上させることが目的でした。しかし今回は、快適性に加えて身体のパフォーマンス向上やリカバリに寄与するウエアが作れないかという視点で体のメカニズムを分析。すると、「筋肉の温度(以下筋温)」が上昇すると細胞が活性化し、筋パフォーマンスの向上と筋肥大による効率的なリカバリに繋がる可能性があることがわかりました。

マラソンや駅伝といった陸上競技の長距離種目は、近年の厚底シューズの出現で新たな時代に突入しました。そして、さまざまな調査や議論を重ねる中で、ミズノはミッドフットストライクとフォアフットストライクが効率的で速く走る着地方法だと考えました。本来、スタートからフィニッシュまで、効率のよい着地方法を維持し続けるのは困難ですが、この「ランニング効率」と「負担軽減」という相反する要素を両立させるようとトライ&エラーやアスリートへのヒアリングを重ねて誕生した新機能が「SMOOTH SPEED ASSIST」です。

※ 下腿三頭筋の伸張性収縮の一般的な指標とされる「足関節底屈トルクの負の仕事」を、社外被験者を用いた実験により測定。レースペース走行時(時速16~20km)にスムーズスピードアシスト機能搭載商品と、非搭載商品(自社)間での「足関節底屈トルクの負の仕事」の値を比較し、搭載品において値が低減されることを確認。
※ 効果や感じ方には個人差があります。

近年、競技会場などにおいて性的な目的で女性アスリートの画像や動画が撮影され、それがインターネットで拡散される被害が各種メディアなどで取り上げられています。そこでミズノでは、盗撮被害の抑制につながる「赤外線防透け」の特長を備えた生地を開発しました。

アスリートに対する盗撮問題には、アスリートはもちろんのこと競技団体も非常に頭を悩ませています。実際に、競技団体や競技主催者は盗撮被害を未然に防ぎたいと考えており、競技会場での呼びかけや撮影に関する制限といった対策を行っています。しかしながら、競技場内での撮影を完全にコントロールすることは難しく、撮影機器も年々高機能化しており、解決が難しい問題となっています。特に近年は、可視光カメラだけではなく赤外線カメラを使用し、ユニフォームの内側の下着や身体まで盗撮されてしまうといった被害が実際に起きています。