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人を大切にする文化を、未来の力へ

ミズノは創業以来、「より良いスポーツ品とスポーツの振興を通じて社会に貢献する」という理念のもと、人を大切にする文化を育んできました。私は、この文化こそがミズノの価値創造を支える最も大きな力だと考えています。
近年、「人的資本経営」という言葉が広く使われるようになりました。しかし、私たちにとって人を大切にするという考え方は、新しいものではありません。大切なのは、人を単なる「資本」として捉えることではなく、一人ひとりの力を最大限に引き出し、それを組織の力へ、そして価値創造へとつなげていくことです。Purpose・Vision・Values(PVV)の実現に向けて、人と組織がともに成長し続けられる環境をつくること。それが、私たちが目指す人的資本経営です。

私自身、人事だけでなく、営業や事業部門、経営企画などさまざまな立場を経験してきました。その中で実感してきたのは、会社の仕事に「価値創造につながらない仕事」は一つもないということです。営業部門や事業部門をはじめとする直接お客さまと接する部門だけでなく、人事や総務、経理などの管理部門も、それぞれが事業を支え、最終的にはお客さまへ価値を届けています。だからこそ、人事も人を管理する部門ではなく、事業を支えるパートナーとして、人と組織の成長を考え続けなければならないと思っています。

その価値創造を支える最大の強みは、「人」です。

私は、人の成長を木に例えて考えることがあります。仕事のスキルや知識は、地上に伸びる枝葉のように目に見えやすく、評価もしやすいものです。一方で、その成長を支えているのは、地中に根を張る人間力や価値観、誠実さ、人を思いやる心といった目には見えない土台です。人はどうしても枝葉に目を向けがちですが、本当に大切なのは、その根がしっかり張っていることではないでしょうか。
ミズノには、その土台を育んできた文化があります。「より良いスポーツ品とスポーツの振興を通じて社会に貢献する」という経営理念や、“ええもん”という考え方は、120年にわたり受け継がれ、一人ひとりの人間力を育む土壌となってきました。私たちが考える“ええもん”とは、製品やサービスだけを指すものではありません。人も、組織も、企業文化も“ええもん”であることが大切だと考えています。Purpose・Vision・Valuesを整理した際も、新しい価値観をつくったのではなく、ミズノが大切にしてきた想いを改めて言葉にしました。だからこそ社員にも自然と浸透し、日々の行動の中に息づいているのだと思います。

一方で、私たちを取り巻く環境は大きく変化しています。スポーツの価値が競技だけにとどまらず、健康やライフ、ワークへと広がり、グローバルでの事業展開も加速しています。そうした時代だからこそ、これまでの経験や知識だけでは対応できない場面も増えています。
そこで、人材開発方針を見直しました。私たちが育てたいのは、一つの正解を知っている人ではなく、多様な視点を持ち、変化を前向きに受け止め、新たな価値を生み出せる人材です。専門性を磨くことはもちろん重要ですが、それだけでは十分ではありません。部門や立場を越えて挑戦し、異なる経験を重ねることで、新しい視点や発想が生まれます。そのため、部門横断のプロジェクトや社内副業、社員が自ら希望する部署に応募できる社内公募制度などを通じて、自ら挑戦できる機会を広げています。
また、キャリア採用の拡大により、多様な経験や価値観を持つ仲間も増えています。外部で培った視点や発想は、これからのミズノに欠かせない力です。一方で、PVVや“ええもん”に代表される価値観は、変えてはいけない土台として共有していきます。新しい視点と、120年かけて育んできた文化。その両方が重なり合うことで、ミズノはさらに強くなれると信じています。

人を大切にする文化は、これからも変わることのないミズノの強みです。その文化を守るだけでなく、変化する時代に合わせて進化させ、一人ひとりが自分らしく挑戦し、力を発揮できる組織をつくっていく。それが私たちの人的資本経営であり、“ええもん”を世界へ届け続ける原動力になると考えています。

ミズノ株式会社 執行役員

(グローバル人事総務部、営業統括部、ワークビジネス事業部、法人営業部)

渡辺剛