サプライチェーンマネジメントの方針と管理体制
基本的な考え方
当社グループが考える「ええもん」とは、製品が安全・安心、かつ高品質であることはもちろん、その生産工程における人権、労働安全衛生、環境保全、ガバナンス体制などが国際的な基準からみて適切であることが重要であると考えています。
そこで、社会的責任に関する国際的なガイダンスであるISO26000の観点を加えた「ミズノCSR調達行動規範」を定め、当社の考えをサプライヤーにも伝えるとともに、これらの原則を遵守することを要請しています。
ミズノCSR調達行動規範については、日本語、中国語(繁体字、簡体字)、英語の3カ国語に加え、母国を離れ海外の製造工場で働くケースへの配慮から、下記の多様な言語の翻訳版を用意しています。
イタリア語、インドネシア語、ウルドゥ語、韓国語、カンボジア語(クメール語)、スペイン語、タイ語、ドイツ語、トルコ語、ブルガリア語、ベトナム語、ポルトガル語、ベンガル語、マレー語、ミャンマー語、ラーオ語(ラオス語)、リトアニア語、ルーマニア語
また、サプライヤーの経営層や幹部従業員がミズノCSR調達行動規範の主旨への理解を深めるため、サプライヤーとの対話を図り、サプライヤーにおける組織的な能力の向上(「キャパシティ・ビルディング」と表現される取り組み)を支援しています。
マネジメント体制
ミズノは、取締役副社長が委員長を務める「プロダクト横断企画開発委員会」を設置し、ミズノCSR調達行動規範の遵守の推進、CSR調達監査の実施などについて、討議しています。
詳細は、「サステナビリティ推進体制」をご参照ください。
人権デューデリジェンス
ミズノは、人権・労働環境の尊重、環境保全および公正な取引を柱とするサプライチェーンマネジメントを重要課題と位置づけ、国内外のサプライヤーと共通認識を形成しながら、人権デューデリジェンスに基づくCSR調達を推進しています。
主要サプライヤーに対して「ミズノCSR調達行動規範」の遵守状況を確認する監査を実施しています。監査において不適合事項が確認された場合には、是正措置および再発防止策の実施を求めるとともに、その進捗をフォローアップし、サプライチェーン全体の継続的な改善とリスク低減に取り組んでいます。
CSR調達のDDプロセス
サプライチェーンの状況
当社は、スポーツシューズ、スポーツウエアおよびゴルフクラブなどの製品を自社工場ならびに委託先工場(「サプライヤー」)で製造しています。
主要なサプライヤーの所在国は、日本国内のほか、中国、台湾、インドネシア、ベトナム、タイ、フィリピン、ミャンマー、カンボジアなどです。
サプライチェーン全体の状況
当社の一次サプライヤーの「製品カテゴリー別」と「国・地域別」の内訳はESGデータをご参照ください。
重要なサプライヤーの状況
年間取引金額および占有率、ならびに製品の重要性などの観点から、当社の事業継続や事業価値にとって影響の大きいサプライヤーを「重要なサプライヤー」と位置づけています。重要なサプライヤーの状況(一次サプライヤー)はESGデータをご参照ください。
重要なサプライヤーの状況について以下を開示しています。
- 重要なサプライヤーの数:185
- 全一次サプライヤーに占める重要なサプライヤーの割合:37.7%
- 全調達金額に占める重要なサプライヤーからの調達金額の割合:96.6%
- 重要なサプライヤーのうち、ミズノが大口納入先※となっているサプライヤーの割合:34.8%
※ 当該サプライヤーの年商に占めるミズノ向け取引の割合が30%以上
サプライヤー情報の開示
当社のサプライチェーンの状況を理解いただくため、2017年度から「サプライヤーリスト」を開示しています。サプライヤーリストでは下記の項目を開示しています。
① サプライヤー名
② 所在地
③ 所在国
④ 製品カテゴリー(Apparel/Equipment/Footwear)
⑤ 従業員数(Less than 1000/1000 to 5000/5001 to 10000)
⑥ 親会社
⑦ 女性従業員の割合
⑧ 移民労働者の割合
⑨労働組合の有無
新規サプライヤー候補工場のCSR事前評価
当社は、CSR調達を実効性あるものとするために、取引開始前の事前評価が重要であると考えています。そのため、ミズノCSR調達規程に基づき、新規サプライヤーに対するCSR事前評価の仕組みを設け、主要な新規サプライヤー候補に対して、生産開始に先立ち、「人権」・「労働慣行」・「安全衛生」・「環境(への影響)」の観点から評価を実施しています。
CSR事前評価のための監査を実施する前に、当該サプライヤー候補に「ミズノCSR調達行動規範」、「ミズノCSR誓約書」、および「ミズノCSR自己診断チェックリスト」の3文書を提示し、サプライヤーによる独立した意志のもと同意いただける場合は、「CSR誓約書」に署名の上、提出いただくこととしています。さらに、CSR調達の解説書でもある「ミズノCSR調達ガイドライン」に沿って説明を行うことで、CSR調達への理解を得ることは言うまでもありません。
実施した監査の評価結果が取引開始の要件である「評価B(評価指標80-89)」に満たないサプライヤーに対しては、監査報告に基づいて是正計画の協議および是正に向けた助言・提言を行います。また、必要に応じて現場を訪問するケースもあります。これらの取り組みにより、ミズノが要求する基準に適合していることを確認できた上で取引を開始することとし、CSR調達を実効性のあるものとしています。
CSR事前評価の流れ
一次サプライヤーに対する監査の実施
取引継続中のサプライヤーに対するCSR調達監査は、「ミズノCSR調達規程」のもと、主なサプライヤーである約200以上のサプライヤーを対象として、ミズノCSR調達行動規範に定める内容の遵守状況について定期的(3年で一巡)にモニタリングを実施しています。
モニタリング方法には、ミズノが監査機関に委託して行う直接的な監査と、他の監査機関によるアセスメントをミズノ基準に照らして評定する2通りがあります。
CSR調達監査は、現場監査、書類監査、従業員インタビューにより構成されているため、通常は複数の監査員が1日~数日かけて行います。遵守状況の確認には、ISO26000をベースとしたグローバルで共通のモニタリングシートを使用します。
モニタリングシートの中の各監査項目は、重要性や緊急性によって、「致命的」、「重大」、および「一般」の3つに分類されます。監査項目に適合している場合は、それぞれの分類に設定したポイントを集計することにより数値化して評価を行います。評価指数90以上をA、80~89をB、70~79をC、69以下または児童労働・強制労働が検出された場合をDというように4つの等級で評価しています。
CSR調達監査と是正の仕組み
サプライヤー所在国によるCSR監査の要否の判断基準
当社は、世界銀行により公表される「世界ガバナンス指標」を参考に、独自の視点も加えて、人権リスクが高いと考えられる国をCSR監査の対象国としています。このため、最新の同指標を参考に毎年レビューを行っています。
同指標を構成する「国民の声(発言力)と説明責任」、「政治的安定と暴力の不在」、「政府の有効性」、「規制の質」、「法の支配」、「汚職の抑制」で上位に位置付けられた国に所在するサプライヤーは、同指標の主旨から監査対象外としています。
日本国内のサプライヤーは、監査対象外であるものの、人権問題が懸念されるケースが散見する外国人技能実習生を雇用するサプライヤーに対しては、監査対象として監査を実施しています。
二次・三次サプライヤーへの対応
当社は、直接に商品売買の取引関係にある一次サプライヤーに対して、人権、労働、環境影響の把握を行い、必要に応じて改善や是正を要請し、良好なサプライチェーンを築くことを重要課題として取り組みを進めています。
また、当社とは直接の取引関係がないものの、一次サプライヤーに原材料や部品・半製品を納めたり、労働力を提供したりする二次・三次サプライヤーについても、懸念される事項がないか察知するべく、一次サプライヤーを通じて情報収集に努めています。
このような状況のもと、2017年度から二次・三次サプライヤーに監査の対象を広げました。ゴルフクラブのアイアンヘッドのメッキ加工や、野球グラブやシューズに使用する皮革のなめし加工などを取り扱うサプライヤーが主な対象となります。
CSR調達監査以外の活動
社会環境の急速な変化を背景に、CSR調達監査における不適合事項の是正だけでは、人権・労働・環境といった本質的な課題への対応には限界があります。このため、今後はCSR調達監査に加え、社内外のキャパシティ・ビルディングを重視し、CSR調達の意義や重要性への理解を深めることで、自発的かつ継続的な改善を促していく必要があると考えています。
その一環として、社員教育を強化し、全社員向けの基礎的な内容から、役員・管理職、海外派遣社員など各層に応じたプログラムを展開しています。2025年度には、以下の取り組みを実施しました。
- ミズノグループ子会社の調達部門担当者を対象とした、ミズノのCSR調達マネジメントに関するオンライン研修
- アパレル部門の調達担当者を主な対象とした、日本の外国人就労制度に関する外部講師による勉強会
また、サプライヤーに対しても、ミズノのCSR調達の考え方や仕組みへの理解促進を目的に、一部サプライヤーを対象とした説明会を実施しました。詳細は「サプライヤーとのコミュニケーション」をご参照ください。
児童労働の禁止に向けた取り組み
アパレルやシューズなどのスポーツ品は、労働者の賃金水準が相対的に低いアジア太平洋地域で生産されています。今後さまざまな理由により、児童労働が増加するおそれがあると指摘されています。そのため、児童労働を監査項目の中でも最重要視し、サプライヤーの多くが所在するアジア太平洋地域で、児童労働に対する一層の監視が必要と考えています。
「児童労働を行わない」ということを「ミズノ倫理規範」に明記し、「ミズノCSR調達行動規範」において、国際労働機関(ILO)の定める中核的労働基準8条約の中の「就業が認められる最低年齢に関する条約」(第138号)、および「最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約」(第182号)を尊重することをサプライヤーに要求しています。
また、児童労働が起こりうるおそれが大きい国や地域を把握するため、前述の「世界ガバナンス指標」を活用し、監査が必要な国と不要な国を分類しています。
強制労働の禁止に向けた取り組み
アジア太平洋地域では、児童労働とあわせて強制労働(いわゆる「現代奴隷」)にも、十分な監視の目が必要と考えています。わが国日本においては、2025年10月末の厚生労働省の調べで、外国人労働者は約257万人(そのうち技能実習の外国人労働者は約50万人)、外国人労働者を雇用する事業所数は約37万所と報告されています。当社が製品を調達するサプライヤーの多くは、外国人技能実習制度を利用して外国人を雇用しています。
その外国人技能実習生の取り扱いが、人権面や労働条件面で問題があると社会問題になっており、外国人技能実習生を雇用するサプライヤーを監査対象に、CSR担当者が直接訪問して監査を行っています。
また、「責任ある外国人労働者受け入れプラットフォーム(JP-MIRAI)※」のメンバーとして、国際水準を満たす「プラットフォーム行動原則」にそって、雇用主等が外国人労働者の受け入れに責任を果たせるよう一助となりたいと考えています。
※ JP-MIRAIは、外国人労働者に暮らしや就労に役立つ情報提供や相談支援を行っています。外国人労働者を雇用する企業等向けには、CSR調達監査を補うのに有効な手段の1つである苦情処理メカニズム(「グリーバンス・メカニズム」)の運営など、サプライチェーンの潜在的問題の早期発見に役立つ仕組みや情報を提供しています。
海外諸法令への対応
当社は、人身売買や奴隷労働を排除する取組みを開示するよう企業に求める各国・各地域の法令に対応しています。米国の「カリフォルニア州サプライチェーン透明法」(2012年施行)や英国現代奴隷法(2015年施行)などの人権尊重の法制化に対応した情報を開示しています。
「英国現代奴隷法」に対する表明
ミズノの英国現代奴隷法2015 に対する表明(ステートメント) FY 2024
ミズノの英国現代奴隷法2015 に対する表明(ステートメント) FY 2023
ミズノの英国現代奴隷法2015 に対する表明(ステートメント) FY 2022
ミズノの英国現代奴隷法2015 に対する表明(ステートメント) FY 2021
ミズノの英国現代奴隷法2015 に対する表明(ステートメント) FY 2020
ミズノの英国現代奴隷法2015 に対する表明(ステートメント) FY 2019
ミズノの英国現代奴隷法2015 に対する表明(ステートメント) FY 2018
ミズノの英国現代奴隷法2015 に対する表明(ステートメント) FY 2017
紛争鉱物に関する取り組み
紛争鉱物(Conflict Minerals)とは
紛争鉱物とは、コンゴ民主共和国(旧:ザイール)や周辺のアフリカ諸国の紛争地域で採掘された鉱物資源のことを言い、脅迫や暴力によって住民や連行されてきた人々が強制的に採掘作業に従事させられ、深刻な人権侵害を引き起こしています。また、そのように採掘された鉱物は、武装勢力や犯罪組織の資金源になっていることから、非常に大きな問題となっています。紛争鉱物を規制する取り決めとしては、第一に米国の「金融規制改革法(ドッド・フランク法)」が挙げられます。同法(第1502条)では、錫(すず)、タンタル、タングステン、金の4物質(総称して「3TG」)を規制対象の鉱物資源と定義しています。米国に上場している企業は、これらを使用した製品を製造もしくは(製造委託を含む)しているかどうか、使用している場合はその状況について、米国証券取引委員会(SEC)に報告するとともに、それらの情報をホームページ等で開示することが義務づけられています。
紛争鉱物に関する取り組み
米国証券市場に上場していないため、SECへの報告と開示の義務はありませんが、サプライチェーンの透明性を確保することが責任ある調達につながると考え、2018年からドッド・フランク法の規制対象である鉱物資源(3TG)の使用状況について調査を開始しました。
具体的には、タングステンはゴルフクラブのヘッドやソフトテニスラケットの重量バランスのための錘(おもり)、野球の超硬スパイクの歯先に使用されています。また、錫や金は各種金属製品のメッキに使用されています。これらの鉱物資源について、紛争地域から調達されたものではないことを確認しています。
なお、2022年以降、ゴルフクラブのヘッドに使用されているタングステンについては、「RMI(Responsible Minerals Initiative)※」が提供する統一の調査票(「CMRT:Conflict Minerals Reporting Template」)に基づき調査を実施し、全ての精錬所を特定しています。さらに、それらの精錬所が、RMIの「Conformant Tungsten Smelters(適合タングステン精錬所リスト)」に登録されていることも確認しています。
RMIの認証精錬所リストに登録されている精錬所とは、「RMAP(Responsible Minerals Assurance Process)」監査で、紛争鉱物の調達管理のプロセスにおいて違法がないことが確認された精錬所であることを意味します。
また、CMRTを使用した調査と並行して、ゴルフのタングステンについて精錬所までのトレーサビリティを実施してサプライチェーンマップを作成、タングステンの調達経路の透明性を確保するとともに、適合精錬所以外の鉱物を使用することのないよう取引先に要請しています。
※ 2008年に設立され、400社を超えるメンバー企業が加盟する組織。
サプライチェーンにおける責任ある鉱物調達に対応するためのツールやリソースを開発しています。
今後の課題
事業の発展・伸長にともない、商品の安定供給のリスクも増大してまいります。安定的な商品供給を維持するには、特定の国やサプライヤーへの依存度を下げるべく生産拠点の分散が不可欠であり、新たな国や地域に所在するサプライヤーからの調達が一層増えることが予想されます。従って、新規のサプライヤー候補に対しては、事前評価を含め、これまでに増して確実かつ精緻に対応することが求められます。
さらに、CSR調達監査による定期的なモニタリングを通じて、監査で検出された問題が是正され、後戻りしないことが重要であると考えています。今後も責任ある調達を実行すべく、サプライチェーンの適正性の確保に引き続き取り組んでいきます。