トップメッセージ
“ええもん”の力で、
社会とともに持続可能な成長を目指します。
サステナブルな社会を、スポーツを通して実現する
地球規模での環境変化や社会課題が加速する中、持続可能性という言葉は、企業や個人の行動指針として極めて重要な意味を持つようになりました。環境変化が人の生活や生態系などに及ぼす憂慮すべき影響を思うと、この問題は経営以前に、人としての責任を問うているように思います。
こうした問題を前に、私たちができることは非常に限られているかもしれません。しかし、一人ひとりが少しでもこの問題の解決に貢献しようとすれば、全体としては必ず大きな力となるはずです。私たちにできることはもちろん、広くさまざまなステークホルダーの皆さまとともに、この問題に取り組んでいきたいと思います。
とくにスポーツには、国や世代を超えたコミュニケーションを生み出す力、人や地域の可能性を引き出す大きな力があります。コロナ禍においては感染症拡大防止の観点から、スポーツは「不要不急」とされた時期もありました。パンデミックが収まった今では、これまで以上にスポーツの価値が高まっているように思います。無観客だった観客席に人が戻り、スポーツは大きな喜び・感動・希望をもたらすものだと再認識できたのです。
この力は、より豊かでサステナブルな社会の実現のために生かしていけるはずです。例えば、サッカー日本代表選手団がロッカールームをきれいに整えたり、サポーターがスタジアムのごみを拾って帰ったりといった行動が世界中で報道され、大きな反響を呼びました。こうした事例からも、スポーツやアスリートが持つ発信力の大きさを改めて感じています。
当社では、トップアスリートに講演やクリニックの講師として参加する際に、環境課題などに触れていただくようお願いすることもあります。アスリートの皆さんの一言が、多くの人の意識や行動を変えるきっかけになると信じているからです。
こうしたスポーツの影響力を生かしながら、当社は「より良いスポーツ品とスポーツの振興を通じて社会に貢献する」という理念のもと、環境意識の啓発を含めさまざまな取り組みを通じて「ミズノと一緒に、少しでもできることをしていこう」と思っていただけるような企業を目指していきます。
創業以来の哲学をよりどころとして
現代の激しい環境変化に対応し、グローバル市場での事業拡大を目指す中で、私たちは2023年、未来の成長につなげるためのパーパス・ビジョン・バリューズを制定しました。このことにより、創業以来継承し続けてきた当社の価値観「“ええもん”を世界に届け続ける」という使命を、全従業員が再認識できただけでなく、パーパス・ビジョン・バリューズは日々の行動・判断のよりどころとなっています。
「ええもん」とは、製品に限ったことではありません。もちろん、メーカーとしてお客さまに優れた製品を提供していくことは第一義です。しかし、それだけでなく、サービスの提供、従業員のふるまい、パートナーとの協業など、あらゆる企業活動において「より良きもの追求する」という思想を包括する言葉にほかなりません。
また「利益の利より道理の理」を重んじた創業者の哲学を、バリューのひとつ「F=Fairness」として掲げました。利益を追うよりも先に「社会にとって良いことか」を常に問い続けること。これは、これからの持続可能な社会実現に向け、ますます精神的な支柱となるはずです。
私たちが120年近く事業を継続できているのは、代々継承されてきたこうした考えがあるからです。次の100年、そしてその先も、創業以来の価値観を根幹に据え、より豊かなサステナブル社会に貢献していきます。
「道理の理」から生まれる新事業への挑戦
「利益の利より道理の理」を体現する当社の特徴のひとつに、競技人口の少ないスポーツに対しても、製品・サービスを展開していることが挙げられます。競技人口に関わらずしっかりと「ええもん」を届けていきたい。単に競争力や利益を追い求めるのではなく、スポーツをする人々を広く支えていくことが私たちの使命であり、結果的に企業価値を高めていくことにつながると考えています。
近年は、スポーツ分野で培った知見や技術を他分野へと応用する取り組みを進めています。屋内外における寒暖などの環境変化に合わせ、働く人がより動きやすく、より快適に作業できるワークアパレルや安全用品の開発。夏の高温などの異常気象に対応できる「快適性」の追求。健康寿命の延伸を支援する運動提案。教育分野における体育環境の整備など、スポーツを起点とした新たなビジネスモデルの構築を強化しています。
イノベーションを加速させる体制の構築
こうした新事業・新市場の開拓には、イノベーションの促進と新たな価値創出に向けて挑戦する文化が必要です。ミズノでは、従業員が勤務時間のうち10%を、業務とは直接関係のない「やってみたいこと」に使ってよいという「10%ルール」や、アイデアソンによる社内提案制度などを設け、事業性があるものには資金・人的支援を行っています。こうした制度により年間800以上のアイデアが出されるようになり、従業員の自発的な行動が促進されています。
グローバル市場での展開においては、各国の文化やニーズ、地域特性の深い理解が必要です。世界最大のスポーツ大国である米国。文化・法律・宗教などの多様性に満ちた欧州。生活水準の向上によりスポーツ人口が増え続けるアジア。それぞれに、地域特性を踏まえたプロダクトミックスとマーケティングミックスが必要であり、その上で、サステナビリティ対応がいっそう求められます。
市場の変化とグローバルな要請に迅速かつ柔軟に対応するには、デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速は不可欠です。当社は、製造・マーケティング・人材育成・オープンイノベーションといった多角的な観点からDXを推進。製品DXにおいては、2025年4月、製品のライフサイクル全体をシームレスかつ一元管理するシステム「Centric PLM™」を本格稼働させました。これにより、設計変更や素材選定、サプライヤーとの調整などのやり取りを可視化し、意思決定に利用できるほか、海外の拠点間とも製品情報の受け渡しを容易にし、効率的な生産体制を構築しています。
企画から開発、生産、サプライチェーンまでを一元管理することで、廃棄・再生までを含む製品ライフサイクルの環境負荷低減を実現します。
また、2022年に新設したイノベーションセンター「MIZUNO ENGINE」では、競技スポーツ分野で培った開発力・技術力などの強みを生かし、スポーツの持つ可能性を最大限に生かしたソリューションを提供するべく、今後も多様なイノベーション創出に挑戦し続けていきます。
誠実さと信念を持った経営で持続可能な成長へ
私たちは、ユーザーをはじめとするさまざまなステークホルダーの皆さまに支えられ、120年近くも事業を続けてこられました。ここに深い感謝を申し上げるとともに、今後も、社会の声に耳を傾け、間違いがあればご指摘を真摯に受け止め、常に進化を続ける存在でありたいと思っています。そして、「ええもん」という理念のもと、持続可能な社会の実現に少しでも貢献できるよう信念を持って取り組んでいきます。今後もステークホルダーの皆さまの一層のご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
ミズノ株式会社 代表取締役社長
水野明人