重要課題
サプライチェーンマネジメント

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基本的な考え方

ミズノはサプライチェーンマネジメントの重要性を認識し、「CSR調達行動規範」を定め、「ミズノCSR調達行動規範」を遵守するCSR調達活動を展開しています。国内外のサプライヤーの理解を得た上で、CSR監査を実施することで、法令遵守はもとより人権、労働条件、安全衛生、環境保全などについて確認するとともに、問題があれば是正を図る取り組みを続けていきます。

サプライチェーンの状況

ミズノは、さまざまな外部組織との協働を通じ、より良いスポーツ品の供給に努めています。スポーツシューズ、スポーツウエアおよびゴルフクラブなどの製品を自社工場ならびに委託先工場で製造しています。主要な委託先工場の所在国は、日本、中国、韓国、台湾、インドネシア、ベトナム、タイ、フィリピン、ミャンマー、カンボジアなどです。

サプライチェーン全体の状況

ミズノの一次サプライヤーの調達品カテゴリー別、および国・地域別の内訳はESGデータをご参照ください。

重要なサプライヤーの状況

年間取引金額、占有率、その他調達品の重要性などの観点から、ミズノの事業継続や事業価値にとって影響の大きいサプライヤーを重要なサプライヤーと位置付けています。重要なサプライヤーの状況(一次サプライヤー)はESGデータをご参照ください。

サプライヤー情報の開示

ミズノはサプライチェーンの透明化の一環として2017年度から工場リストを開示しています。

工場リスト

国内外でのCSR調達監査実施と改善への取り組み

当社におけるCSR調達は、ミズノ本社はもとより海外支店・子会社やライセンス契約をしている販売代理店の調達先までを対象範囲としています。CSR調達活動には、取引開始前のサプライヤーのCSR事前評価と、取引中のサプライヤーの定期的なCSR監査の2つが含まれています。

また、当社は海外の委託先工場におけるCSR調達状況の改善は、その分野に知見を持つ団体や同業他社と共同で取り組むことが有効であると考えており、サプライヤーのCSR調達状況改善に向けた社外組織との協働にも積極的に取り組んでいます。

新規サプライヤー候補工場のCSR事前評価

ミズノは、CSR調達を確かなものとするためには取引前の事前評価が重要であると考えています。そのため、ミズノCSR調達規程に基づき「新規サプライヤーに対するCSR事前評価」の仕組みを設け、主要な新規サプライヤー候補工場に対して、生産開始前に人権評価、労働慣行評価、環境評価を実施しています。CSR事前評価のための監査を実施する前に、新規サプライヤー候補工場に「ミズノCSR調達行動規範」「ミズノCSR誓約書」「ミズノCSR自己診断チェックリスト」の3つの文書を提示し、「CSR誓約書」に署名をしてもらいます。
加えて、CSR調達の解説書でもある「ミズノCSR調達ガイドライン」を用いて説明を行い、CSR調達への理解を求めた上でCSR監査を実施します。実施した監査の評価結果が取引開始の条件である評価B(評価指標80-89)に満たない工場に対しては、CSR監査報告書に基づく是正計画・報告書を送付した後、是正計画内容の協議、是正指導を行い、場合によっては、現場訪問をします。それらの是正活動により、当社が要求する条件に適合したことを確認した上で取引を開始することにより、CSR調達を確かなものとしています。

新規サプライヤー候補工場CSR事前評価の流れ

図:新規サプライヤー候補工場CSR事前評価の流れ

新規サプライヤー候補工場CSR事前評価実施率(人権・労働慣行・環境側面のモニタリング実施比率)

2022年度は、全新規サプライヤー候補に当たる22件の事前評価(監査)を行い、評価Aのサプライヤーが3社、評価Bが1社、評価Cが、2社、他の監査プログラムによる評価でB以上相当16社という結果でした。評価Cのサプライヤーについては、監査結果を基に是正計画書作成し、是正の進捗確認をしています。近年、既に他社のCSR監査を受けている新規サプライヤー候補が増加傾向にあります。そこで当社は、監査の重複を避けるため、幅広い適格監査プログラムを受け入れ、監査を審査することにより、新規サプライヤー候補が当社の要求する要件を満たしているかどうか事前評価を行っていきます。

CSR監査で評価C以下だった場合の是正の取り組み

当社は、事前評価で評価C以下であった工場に対しては、まず、CSR担当部門から当社のサプライヤーの担当者を通して、結果のフィードバックをします。その上で、不適合と指摘された項目の具体的な改善方法について、サプライヤーに対してアドバイスをするなど、取引開始の前提条件である評価B以上に到達するまで、フォローアップしていきます。

CSR調達行動規範の各国語訳の作成と配布

「ミズノCSR調達行動規範」については、これまで日本語、中国語、英語の3カ国語を作成しサプライヤーおよび委託先工場に配布していました。2018年には、工場で働く従業員への理解を促すために、工場がある現地の言語への翻訳を行いました。2021年度末時点では以下の言語を用意しています。

(アイウエオ順)
イタリア語、インドネシア語、ウルドゥー語、英語、韓国語、クメール語、スペイン語、タイ語、中国語(繁体字、簡体字)、ドイツ語、トルコ語、日本語、ブルガリア語、ベトナム語、ポルトガル語、ベンガル語、マラヤ語、ミャンマー語、ラオ語、リトアニア語、ルーマニア語 (以上22言語)

「ミズノCSR調達行動規範」の翻訳はこちらをご参照ください

一次サプライヤーにおける監査の実施と是正に向けた取り組み

取引中のサプライヤーに対するCSR監査は、「ミズノCSR調達規程」のもと、主なサプライヤーである約150以上の工場を対象として、ミズノCSR調達行動規範に定める内容の遵守状況について定期的(3年で一巡)にモニタリング(CSR監査)を実施しています。2022年度は57工場(一次工場:56工場〈国内9工場、海外47工場〉二次工場:1工場)の監査を行いました。
CSR監査は、現場監査、書類監査、従業員インタビューにより構成されているため、通常は複数の監査員が1日~数日かけて行います。遵守状況の確認には、ISO26000をベースとしたグローバルで共通のモニタリングシートを使用します。モニタリングシートの中の各監査項目は、重要度と緊急度によって、致命的、重大、一般の3つに分類されています。監査項目に適合している場合は、それぞれの分類に設定したポイントを集計することにより数値化して評価を行います。

CSR監査と是正の仕組み

図:CSR監査と是正の仕組み

CSR監査対象とする条件の一つ

ミズノは、世界銀行が発表する「世界ガバナンス指標」を参考に独自の視点も加えて、人権リスクが高いと考えられる国々をCSR監査の対象国としています。この作業は直近の「世界ガバナンス指標」を参考に毎年レビューを行っています。
国民の声(発言力)と説明責任、政治的安定と暴力の不在、政府の有効性、規制の質、法の支配、汚職の抑制などで総合的に上位に位置付けられた国は、CSR監査対象外国としています。日本は、CSR監査対象外国ですが、日本に所在する工場であっても人権問題が懸念されている外国人技能実習生を雇用する工場に対しては、監査対象工場としてCSR監査を実施しています。

「世界ガバナンス指標」の詳細はこちらをご参照ください

外国人技能実習生を雇用する監査対象工場の実態調査

2022年4月1日時点で、日本に所在するミズノの製造委託先工場は125工場あり、そのうちの37工場が延べ324人の外国人技能実習生を雇用しています。外国人技能実習生を雇用する工場で、当社の基準で監査対象となった工場は22工場あり、201人の外国人技能実習生が働いています。
2022年度は、日本国内37工場のうち16工場が監査対象でした。廃業などの事情により、中止が3社、翌年度への延期が4社となりましたが、2022年度は9工場の監査を実施しました。2022年度にCSR監査を実施した9工場の評価は、すべてA評価でした。9工場で雇用されている外国人技能実習生の国籍内訳は、中国:8人、ベトナム:68人、インドネシア:12人、タイ:1人、カンボジア:13人、ミャンマー:9人でした。

主なモニタリング内容

当社は、人権、労働慣行、安全衛生、環境などのテーマごとに項目を設けて、監査を行っています。各監査項目は、緊急度と重要度によって、「致命的」「重大」「一般」の3つに分類されています。2022年度は、下記の項目で「致命的」「重大」な不適合が見つかりましたが、各工場に対して、それぞれの項目の是正に向けた指導は、完了しています。

監査において致命的・重大な項目で不適合のあった工場数と割合(2022年度)

分類 項目 致命的
項目数
重大
項目数
合計 不適合のあった
工場数
割合
人権 児童労働および年少者の労働者 1 2 3 2社 3.5%
奴隷労働 / 強制労働 / 移住労働 3 8 11 2社 3.5%
結社の自由 4 4 4社 7.0%
差別 / ハラスメント / ジェンダー 1 2 3 4社 7.0%
労働慣行 雇用契約 / 雇用条件 2 2 5社 8.8%
労働時間 4 4 30社 52.6%
報酬 1 4 5 26社 45.6%
安全衛生 労働環境 3 3 23社 40.4%
化学物質 2 2 13社 22.8%
消防 2 7 9 39社 68.4%
3 1 4 3社 5.3%
環境 管理システム 2 2 8社 14.0%
汚染の防止 7 7 20社 35.1%
化学物質 4 4 3社 5.3%
63

国別監査件数と平均点

グラフ:国別監査件数と平均点

人権に関する不適合項目について

項目 要求事項 不適合 是正済 是正
未完了
備考 国名 生産品
結社の自由 向上と労働者の代表が協議などを通して、労働者の苦情を解決する仕組みを持ち、有効に機能しているか? 3 1 2 追跡監査
実施予定
タイ
中国
野球用防具
バッグ
結社の自由 労働者は彼ら自身の代表 / 代弁者を選出しているか? 1 1 0 是正完了 中国 バッグ
結社の自由 労働組合を結成し、加入する労働者の権利は、労働者に対して経営者により認められているか? 1 0 1 中国 スポーツウエア
差別 / ハラスメント / ジェンダー 雇用、報酬、訓練へのアクセス、昇進、契約解除または退職が人種、社会階層、出身国、宗教、年齢、障がい、性別、婚姻の状況、性的な対応、労働組のメンバーまたは政治的所属に基づく差別はないか? 4 1 3 追跡監査
実施予定
タイ
タイ
中国
野球用防具
野球グラブ
ゴルフ部品
児童および未成年労働者 工場で働いているすべての未成年労働者を現地の労働当局に登録しているか? 1 1 0 是正完了 中国 ゴルフバッグ
児童および未成年労働者 児童労働者はいないか? 1 0 1 追跡監査
実施予定
中国 ゴルフ部品
奴隷労働 / 強制労働 / 移住労働 すべての移住労働者は、または、外国人労働者は、合法的に受入国に居住し、工場が雇用している全期間を通じて有効な労働許可証を持っているか? 2 0 2 追跡監査
実施予定
タイ 野球防具
奴隷労働 / 強制労働 / 移住労働 生産目標の未達成または病気欠勤による金銭の控除(または罰金)をしていないか? 2 0 2 追跡監査
実施予定
タイ 野球用防具

監査結果の評価ランク

ミズノは、評価指数90以上を評価A、評価指数80-89をB、評価指数70-79をC、評価指数69以下または児童労働・強制労働が発見された場合をDとし、監査結果を4段階で評価しています。

2022年度の監査対象工場の評価ランクは以下の通りです。

評価ランク 対象数
A 45社
B 6社
C 4社
D 2社
全体 57社

違反が確認されたサプライヤーの是正状況

不適合が多かった項目

2022年度の監査で不適合が多かった項目は安全衛生(電気/機械/設備、消防、救急処置、労働環境 化学物質)、 労働慣行(労働時間、報酬 )環境(汚染の防止、資源の使用/気候変動の緩和)などでした。
具体的には、機械の危険な部分の保護装置設置、出口および非常口の標識や表示灯の設置、救急処置キットの配備、非常口および避難経路上の障害物、個人防護用具(PPE)の労働者への支給、危険/有害物質/産業界器物の保管方法、化学薬品貯蔵所や危険廃棄物貯蔵所の消火設備、消防検査証明書 などの許可証、危険な環境に晒される労働者のための定期健康診断、労働時間・残業時間、休暇取得、残業手当、エネルギーの消費管理、抑制などで不適合が多く発見されました。

中項目 項目 割合
1 安全衛生>電気/機械/設備 機械の可動/回転部分、滑車、およびベルトまたはその他の機械の危険な部分に、適切な保護装置が設置されているか? 49.1%
2 労働慣行>労働時間 労働時間・残業時間は法的要求事項を満たしているか? 42.1%
3 安全衛生>消防 出口および非常口は、標識または表示灯と共に確認されているか? 31.6%
4 安全衛生>救急処置 適切な救急処置キットが各工場フロアに配置され、そして標識で示されているか? 24.6%
5 安全衛生>消防 各工場フロアにおいて、非常口および避難経路には避難に支障をきたす障害物がないか? 24.6%
6 安全衛生>労働環境 危険な環境に晒される労働者のために定期健康診断を手配しているか? 24.6%
7 労働慣行>報酬 残業手当は法的要求事項を満たしているか? 24.6%
8 労働慣行>労働時間 労働者が7日間に1日の休みを取ることは可能か? 24.6%
9 労働慣行>労働環境 個人防護用具(PPE)が労働者に支給されているか? 22.8%
10 安全衛生>化学物質 危険/有害物質は安全かつ厳重に補完されているか?
化学薬品貯蔵所の消化設備は適切か?
危険廃棄物貯蔵所の消火設備は適切か?
21.1%
10 安全衛生>消防 現地の法律または規則が要求する場合は、現地の消防行政機関によって発行された有効な消防検査証明書 /許可証を持っているか? 21.1%
10 安全衛生>消防 非常口の扉の開放方向は外向きになっているか? 21.1%
10 環境>汚染の防止 廃棄物の補完場所は整理され、現地の法律に従い適切に管理されているか?
(文書化された手順書に基づく危険物の取扱い、一定の補完スペース、適切な容器、わかりやすい表示など)
21.1%
10 環境>資源の使用/気候変動の緩和 工場は電気・ガス等のエネルギーを管理しているか?消費を抑制しているか? 21.1%

不適合項目の是正状況

不適合項目の是正状況は、ESGデータをご参照ください。

二次・三次サプライヤーにおける対応

当社は、当社と直接的な関係を持つ一次サプライヤーにおける人権、労働、環境影響の把握と必要に応じた是正を第一に優先すべき重要課題として取り組みを進めています。

また、当社とは直接取引がないものの、ミズノの委託先工場に部材や部品を納める二次・三次サプライヤーについても、著しい人権、労働、環境影響が発生するリスクの高い領域に焦点を据えた取り組みを進めています。当社は、2017年度からリスクが高いと思われるゴルフクラブのアイアンヘッドなどのメッキ、繊維素材の染色、野球グラブやシューズ用の皮革なめしなどを行う二次・三次サプライヤーの現状把握を開始しました。

年度 内容
2017 ゴルフの部品工場を2工場監査しました。部品工場以外の二次・三次サプライヤーである日本の金属加工工場とタイの生地染色加工工場の実情を把握するため、現地に赴き、現場の視察をしました。
2018 中国のゴルフクラブの部品工場、ゴルフクラブのメッキ工場、ベトナムの皮革なめし工場、シューズのアッパー(甲被材)工場、シューズのゴム底工場の計5工場のCSR監査を実施しました。
2019 ゴルフ部品工場、シューズの甲被材、底材工場 計6工場のCSR監査を実施しました。その内、ゴルフ部品工場、底材、甲被材加工工場の3工場の監査結果がミズノの合格基準を下回りました。
2020 2018年度および2019年度に基準を下回った3工場の内、2工場の追跡監査を実施しました。追跡監査対象の2工場は、不適合項目が是正され、Aランクの評価になりました。また、2020年度には、ゴルフクラブの部材工場の1工場の監査を実施しました。
2021 工場は、新型コロナウイルス感染防止措置として外部からの訪問者の入場制限などを実施したため、二次、三次サプライヤーの監査を実施できませんでした。
2022 ゴルフの部品工場1件の監査を実施しました。当工場は、ミズノの合格基準を下回ったため、2023年度に追跡監査を実施します。
2023 2020年以降、ゴルフクラブの二次、三次サプライヤー以外の監査を中止しています。2次・3次サプライヤーの取引状況や実態の調査を行い、2024年以降の管理方法の検討を行います。

CSR監査以外での対応

現在、当社の委託先工場の多くが所在する東南アジアでは、現地の急速な経済成長を背景として今まで以上に環境問題や労使紛争などが起こりやすい状況になってきています。このような社会の変化が進展する状況下では、CSR監査における不適合項目の是正だけでは根本的な人権・労働・環境問題の解決にはつながりにくくなっています。そのため、今後はCSR監査以外の活動として、工場のキャパシティ・ビルディング(能力向上)に力を注いでいく必要があると考えています。
2022年度は、社外では、JP-MIRAI、取引先企業のESGセミナー、日本弁護士会のイベントに登壇し、ミズノのCSR活動報告およびCSR調達管理の概要を紹介しました。社内では、人事総務部の教育プログラム(全社員向け、新入社員向け、海外研修生向け、新任管理職向け)で、企業が人権問題に取り組むことの重要性を説明するとともに、欧州ミズノ、ミズノUSA、韓国ミズノなどの海外子会社、国内子会社のセノー(株)へCSR調達の仕組みの説明を実施することで、関連会社を含めた国内外社員へのCSR活動の啓発活動をしました。

責任ある外国人労働者受入れプラットフォームへの参加

日本国内の外国人労働者は約182万人(そのうち技能実習の外国人労働者は約34万人)、外国人労働者を雇用する事業所数は約29万カ所と報告されており※、日本の経済・社会の重要な構成員となっています。
当社は、SDGsの目標年限である2030年に向けて、任意団体の「責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム(JP-MIRAI)」に参加することにより、国際水準を満たす「プラットフォーム行動原則」に賛同・実践する企業や団体と共に、雇用主や受け入れ団体が法令を遵守し、責任を持って外国人労働者を安定的に受け入れるように外国人労働者の労働・生活環境の改善を推進していきます。

※ 厚生労働省調べ、2022年10月末現在

苦情処理メカニズム(グリーバンス・メカニズム)」の構築

CSR監査は監査時点の状況を把握することはできますが、工場を常時モニターすることはできません。当社は、救済のアクセスを保障するとともに、潜在的なサプライチェーン上の問題を早期に発見するため、CSR監査を補う手段として有効とされる「苦情処理メカニズム(グリーバンス・メカニズム)」の導入に向けて、業務を委託する組織の選定などの情報を収集し、検討を続けます。

児童労働の禁止・廃絶に向けた取り組み

世界の児童労働に関する報告書(Child labour: Global estimates 2020, trends and the road forward)によると、2016年以降、児童労働に従事する子どもの数は840万人増加し、2020年初頭には世界中で1億6,000万人になりました。その数は世界の子どもたちのおよそ10%に当たります。内訳は、少女が6,300万人、少年が9,700万人となり、ILOが20年前に世界推計値を発表して以来、初めての増加となります。

当社のアパレルやシューズなどのスポーツ品は、労働者の賃金が相対的に低いアジア太平洋地域で生産されています。
最近の傾向として、サハラ以南のアフリカで児童労働が増加傾向にある一方、アジア・太平洋地域における児童労働は減少し続けています。しかしながら、COVID-19による貧困の影響で、児童労働は2022年末までにさらに890万人増加する可能性があるといわれています(予測される増加分の半数以上は、5歳から11歳までの低年齢の子どもたちです)。
したがって、当社は、製造委託先工場の多くが所在するアジア太平洋地域での児童労働に対する一層の監視が必要と考えています。

国連グローバルコンパクトの原則5では、児童労働は、人権侵害を構成する搾取の一形態であり、国際協定によって認識、定義されています。そして、国際社会およびほとんどすべての政府は、児童労働の廃止を政策に掲げています。当社は、「児童労働を行わない」ということを「ミズノ倫理規範」に明記しています。さらに、「ミズノCSR調達行動規範」では、供給者がILOの定める中核的労働基準8条約の中の「就業が認められる最低年齢に関する条約」(第138号)、および「最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約」(第182号)を尊重することをサプライヤーに要求しています。また、児童労働が使用されるおそれが大きい国、地域を把握するための基準として、「世界ガバナンス指標」を活用し、監査を必要とする国と必要としない国を設定しています。
当社は、児童労働を監査項目の中でも最重要視しています。もし、CSR監査中に児童労働を発見した場合、当社は直ちに対応を検討し、迅速にしかるべき措置を講じます。その一方で、児童労働が発生する背景には、貧困などの社会的背景が深く関係していると考えられるため、是正勧告をするだけでなく、児童労働の根本原因を追究するとともに、その解決策を工場と共に考えていきます。

2022年度に実施した監査では、児童労働の事例はありませんでした。しかしながら、中国の工場で、若年労働者(16~18歳)3人を雇用していた工場が、地方労働行政局から若年労働者登録を取得しておらず、健康診断も実施していなかったというケースがありました。当該工場に対して、監査結果に基づき、是正計画の作成を促し、既に是正完了をしています。

現代奴隷(あるいは強制労働)への対応について

国際労働機関(ILO)の現代奴隷(強制労働と強制結婚)に関する報告書(Global Estimates of Modern Slavery : Forced Labour and Forced Marriage, 2017)では、2016年に全世界で4,000万人の現代奴隷、2,500万人の強制労働が存在すると指摘されています。地域別では、アジア太平洋地域が千人当たり4人と最も多くなっています。したがって、アジア太平洋地域では、児童労働と同様に現代奴隷・強制労働にも、監視の目が必要と考えています。

日本に目を向けると、アパレル縫製などの労働集約型産業では、多くの工場が外国人技能実習制度を利用して外国人を雇用しています。当社も日本に所在する委託先工場からも商品を調達しています。

国連グローバルコンパクトの原則4では、強制労働または強制的労働とは、ある者が処罰の脅威の下に強要され、かつ自ら任意に申し出たものではない全ての作業または役務と定義しています。近年、日本における外国人技能実習生の取り扱いが、人権面や労働条件面で問題があると社会問題になっています。当社は、強制労働の慣行撤廃を確保する一助として、日本国内の外国人技能実習生を雇用する工場を監査対象工場に指定し、当社のCSR調達担当者が直接CSR監査を行っています。

2022年度、国内では、強制労働に該当する不適合の事例はありませんでした。海外では、タイの工場において、移民労働者に対する法令違反および不当な取り扱いが監査で発見されたため、是正措置を講じました。

紛争鉱物に関する取り組み

紛争鉱物とは

紛争鉱物(Conflict Minerals)とは、アフリカ諸国などの紛争地域で採掘された鉱物資源のことです。暴力によって近隣住民が強制的に採掘作業に従事させられるという人権問題に加えて、武装勢力の資金源になっていることが問題視されています。
特に米国金融規制改革法(ドッド・フランク法)は、すず、タンタル、タングステン、金(3TG)の4物質を規制対象の鉱物資源として定義しています。米国の上場企業は、これらを使用した製品を製造、委託製造しているか否かについて、米国証券取引委員会(SEC)に報告するとともに、ホームページで開示することが義務付けられています。

紛争鉱物に関する取り組み

当社は、米国上場企業ではないため、報告義務と開示義務の対象外となっていますが、2018年に紛争鉱物と定義される物質の使用状況について調査し、それらを使用している製品を特定しました。具体的には、ゴルフクラブのヘッド、ソフトテニスラケットなどの重量バランスのための重り、野球超硬スパイクの歯先にタングステンを使用していることが分かりました。

当社グループでは、2022年時点で、ゴルフクラブのヘッドに使用されているタングステンについて、RMI(Responsible Minerals Initiative)が提供する統一の調査票(CMRT:Conflict Minerals Reporting Template)を使用した調査を実施し、全ての精錬所を特定しました。さらに、それらの精錬所が、RMIのConformant Tungsten Smelters(適合タングステン精錬所リスト)に登録されていることを確認しました。

RMIの認証精錬所リストに登録されている精錬所とは、RMAP(Responsible Minerals Assurance Process)監査で、紛争鉱物の調達管理のプロセスにおいて違法がないことが確認された精錬所であることを意味します。

また、CMRTを使用した調査と並行して、ゴルフのタングステンについて精錬所までのトレーサビリティを実施しサプライチェーンマップを作成、タングステンの調達経路の透明性を確保するとともに、認定精錬所以外の鉱物を使用することのないよう、取引先に要請していきます。

人権尊重に関する海外の法令対応

今後の課題

ビジネスのグローバル化に伴い、サプライチェーンのグローバル化も進展しています。今後、新たなサプライヤーからの調達が一層増えることが予想されるため、継続して新規サプライヤーに対する事前評価を確実に実施していきます。

CSR調達監査による定期的なモニタリングは、もとより監査で指摘された問題の是正が重要です。今後も、サプライヤーとの対話を通じて是正の促進に引き続き取り組みます。