重要課題
子どもの体力・運動能力の向上
基本的な考え方
情報化社会の進展などにより、子どもの体力・運動能力は世界的に低下傾向が続いています。子どもの体力低下は、将来世代の健康状態に影響を及ぼすだけでなく、医療費の増加につながるなど、社会全体の活力に影響を及ぼすことが予想され、教育機関や家庭を含む社会全体での取り組みが望まれています。
日本では、子どもの体力・運動能力低下の背景として、1)手軽かつ安全に遊べる外遊びの場の減少、2)幼少期に身につけておくべき基本的な動きが発達していない、3)スポーツへの苦手意識、などが要因と考えられています。ミズノは、子どもの体力・運動能力の向上を目的とした独自の運動プログラムを開発し、展開を進めています。
ミズノ独自の運動プログラムの開発:ヘキサスロン
ミズノは、運動が苦手な子どもでも楽しくスポーツの基本的な動作を習得できる運動遊びメニューと、運動能力測定を組み合わせたプログラム「ヘキサスロン」を開発し、日本全国各地の自治体と協働して小学校をはじめとした各種施設に提供しています。「ヘキサスロン」は、安全性と機能性を考慮したミズノオリジナルの用具を用い、各自の運動能力に合わせて「走る」「跳ぶ」「投げる」の基本動作を習得できるよう構成されています。場所、プログラム、サービスをセットで提供することにより、楽しく、かつ着実に子どもたちの体力・運動能力の向上につなげることが可能となっています。
ミズノ独自の運動プログラムの開発:その他
子どもの体力・運動能力の向上のためには、幼少期から身体を動かすことに慣れ親しみ、スポーツへの苦手意識を克服することが重要です。
ミズノは、スポーツに関する知識・経験が豊かなミズノスタッフが講師となり、「ミズノ・スポーツ塾」や「運動会必勝塾」などのプログラムを各地で開催しています。幼少期に身につけておくべき基本的な動きを短期集中で克服し、運動の楽しさを味わってもらうことで、運動が好きな子どもを増やすことを目指しています。
運動の苦手な子どもたちへ「苦手克服教室シリーズ」として、跳び箱、マット、鉄棒に加えて、ミズノ苦手克服縄跳び教室も2022年度からスタートしました。
縄跳びを「うまく跳ぶこと」が目的ではなく、「跳ぶことが好きになる」をテーマにした運動遊び中心の取り組みです。
また、3~5 歳の子どもの親子を対象に、その年代で覚えてほしい動きを取り入れた運動遊びプログラム「PLAY ! CIRCUS」を展開しています。「PLAY ! CIRCUS」は、サーカスの世界観で、サーカスの団員となり、団長やピエロと一緒に楽しむ60分のプログラムです。
子どもの体力・運動能力の向上に関するプログラムの実績
項目 | 内容 | 項目 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 |
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ヘキサスロン | |||||||
スポーツの基本的な動作を楽しく習得できるメニューと運動能力測定を組み合わせたプログラム(※数字は国内のみ) | |||||||
導入数(校) | 8 | 9 | 7 | 8 | 23 | ||
開催数(回) | 150 | 17 | 13 | 13 | 23 | ||
参加者(人) | 5,656 | 1,446 | 631 | 661 | 1,569 | ||
ミズノ流忍者学校(2021年度からは「めざせ!しのびポケモンゲッコウガ!」プログラムも実施しています) | |||||||
幼少期の成長に必要な「走る」「跳ぶ」「投げる」などの36の基本動作を盛り込み、忍者の修行に見立てたストーリー型遊び運動プログラム | |||||||
開催数(回) | 144 | 63 | 24 | 54 | 13 | ||
参加者(人) | 4,289 | 789
(延べ) |
487
(延べ) |
865
(延べ) |
644 | ||
ミズノ・スポーツ塾 | |||||||
マット運動・鉄棒・跳び箱などを取り入れた、運動が苦手な子どもたちのためのプログラム | |||||||
開催数(回) | 985 | 182 | 60 | 45 | 41 | ||
参加者(人) | 8,093 | 1,760 | 1,018 | 455 | 788 | ||
運動会必勝塾 | |||||||
運動会のリレーやかけっこで1等賞をとるためのレッスン体験型プログラム | |||||||
開催数(回) | 26 | 7 | 8 | 5 | 5 | ||
参加者(人) | 380 | 98 | 259 | 215 | 165 | ||
苦手克服教室 縄跳び | |||||||
縄跳びの苦手な子どもたちへ、1回でも跳べるように、また縄跳びをが好きになってもらうプログラム | |||||||
開催数(回) | 62 | 35 | |||||
参加者(人) | 879 | 725 |
ヘキサスロン
ミズノ流忍者学校
ミズノ・スポーツ塾
運動会必勝塾
PLAY ! CIRCUS
ベトナムでの「ミズノヘキサスロン運動プログラム」導入普及促進事業
ミズノは、2015年からベトナムで「ミズノヘキサスロン運動プログラム」普及促進事業に取り組んできました。ベトナムの義務教育期間における体育の授業時間は、先進国に比べ非常に少なく、運動プログラムも画一的で、「走る」「跳ぶ」「投げる」などのスポーツの基本動作の要素が十分に考慮されていないことが課題でした。
2018年9月に当社はベトナム教育訓練省との間で、新学習指導要領における「ミズノヘキサスロン」導入に向けた協力合意を取り交わし、同国小学校 1,000校に対して、スポーツ用具の提供を行いました。
また、同年10月には「ミズノヘキサスロン」導入と定着に関する協力覚書を正式に締結しました。これにより、新学習指導要領への「ミズノヘキサスロン」導入と定着化に向けたモデルケースを各地でつくり出すことが可能となり、同年12月以降、ベトナム全63省を対象とした導入普及促進活動を実施しました。
小学校の教師を対象とした、指導員養成のためのワークショップには、2019年末までに約1,700人の教師が参加し、それぞれが担当する小学校で指導に当たることで、多くの小学生が「ミズノヘキサスロン」を活用した体育授業を受けてきました。
2020年3月以降は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、大人数を一堂に集めるワークショップ活動は見合わせていましたが、コロナ以前にワークショップ活動に参加した現地の教師の方々から、それぞれが地元の小学校でミズノヘキサスロンを体育授業に取り入れているといった報告が届いています。
2022年6月には、本事業に対して、ベトナム国家主席府から特別感謝状を授与されました(授与式は、2022年6月27日にミズノ大阪本社で実施)。
2023年1月時点で、ミズノヘキサスロンは、ベトナム全63省200校の小学校(公立小学校126校、私立小学校等74校)で、課外授業として導入されています。ベトナム全土には、約15,000校の公立小学校が存在するため、2023年当初から当社はベトナム教育訓練省と「いかにしてミズノヘキサロスンを義務教育化するべきか」という課題に関して、さまざまな角度から実務者協議を実施してきました。その結果、2023年10月に当社は両国大臣立会いの下、教育訓練省と新たな協力覚書を締結しました。当社は、さまざまなプロセスの集大成として、本事業への取り組みをさらに加速していきます。
2023年10月に締結した協力覚書に関してはこちらのリンクをご参照ください。
今後も当社は、ベトナムの子どもたちに「運動をすることの楽しさと体を動かすことの喜び」を広げるとともに、スポーツの力を活用して社会課題を解決する「スポーツSDGs」の達成を目指し、本事業を推進していきます。
ベトナム国家主席府からの特別感謝状授与についてはこちらをご参照ください。
ベトナム国家主席府より特別感謝状を受章
ミズノオリジナルライセンス「ミズノプレイリーダー」の普及
ミズノは、子どもたちがいきいきと遊べるような環境をつくり、子ども同士の主体的な遊びを見守る「ミズノプレイリーダー」の育成に取り組んでいます。子どもに接する機会が多い企業、大学、行政、教育関係者に、プレイリーダーとしての基礎知識と実技を身につけていただき、運動遊びの基本的な内容を研修する活動を実施しています。この研修活動を社内外に普及させており、現時点で全国各地に約 1,200人のミズノプレイリーダーの輪が広がっています。子どもたちと全力で向き合い、子どもたちの信頼を得て、いざという時は全力で守ります。
ミズノプレイリーダー
(人)
社内 | 社外 | 総数 | |
---|---|---|---|
1級 | 4 | 0 | 4 |
2級 | 31 | 5 | 36 |
3級 | 346 | 774 | 1,120 |
合計 | 381 | 779 | 1,160 |
今後の課題
現代の子どもたちには、遊ぶ「空間」「仲間」「時間」の三つの「間」がないといわれています。また、保護者からは「子どもとの遊び方が分からない」という声も耳にします。
ミズノは、子どもがいきいきと遊べるような環境づくりと、それを見守る「ミズノプレイリーダー」の育成を行っています。
プレイリーダーは、おもしろく夢中になれる遊びや運動を提供することで、子どもたちが主体となって子ども同士で遊べるような環境を作っています。このプレイリーダーを広く社内外で普及させ、運動遊びを通じて子どもたちの健全な心と体づくりを支援していきます。
また、今後はプレイリーダーが活躍する「場」も創出していきたいと考えています。そのためには、プレイリーダーが普及する上で今後想定される課題の抽出と、保護者への啓発活動を同時に行い、プレイリーダーの認知をさらに拡大させていく必要があります。プレイリーダーが世の中に広く認知されるよう、運動遊びプログラムやイベントを通じて、より一層の浸透を図っていきます。