気候変動戦略
TCFD提言に基づく情報開示
今まで経験したことのないような暴風雨、命の危険を感じるような猛暑、巨大化する台風など、自然災害による企業の事業収益への直接的なリスクが無視できないレベルに甚大化しています。スポーツにおいても、気温上昇により、夏のスポーツの競技時間の変更や冬のスポーツにおける雪不足など、目に見える形で気候変動の影響が出てきています。
ミズノグループは、G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB)により設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD: Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」のフレームワークに基づき、気候変動関連リスク、および機会に関して、現状の棚卸を実施しました。
併せて、当社グループは、2022年3月に「TCFD」提言への賛同を表明し、以下の通り「TCFD」の提言に基づく情報を開示しています。気候変動に関するガバナンスをさらに強化していくとともに、当社の事業におけるリスクと機会の分析に基づいた戦略を検討・策定し、情報開示における透明性を今後さらに高めてまいります。
【TCFD要求項目:1.ガバナンス】
気候変動に関する事項は、人事総務担当の執行役員が委員長を務めるサステナビリティ推進委員会(社内名:MIZUNO CREW21※本委員会)(原則年4回開催)で議論しその内容はサステナビリティ活動の推進状況とともに取締役会に報告され、取締役会が監督する体制となっています。
2021~2022年度は、取締役会において4回、取締役と執行役員が出席する執行役員会において2回、取締役、執行役員、事業部長が出席する経営会議において4回、気候変動に関する事項が報告されています。それらの会議体において、経営戦略(6回)、情報共有、情報開示についての意思決定がなされ、事業活動に反映されています。また、サステナビリティ推進委員会の下部委員会に、社会的責任およびサステナビリティに関する重要課題(マテリアリティ)として特定した項目のうち、複数の部門が関係する課題に関しては、それぞれ独立した委員会、CREW21環境分科会、CREW21 プロダクト分科会、プロダクト横断企画開発委員会を設置しています。
気候変動に関する課題に対する具体的な施策については、CREW21環境分科会で討議しています。
※ CREW21には、「宇宙船地球号の乗組員(Crew)」としての役割を担い、資源と環境の保全活動を実践していこうという思いが込められています。
CREW: https://corp.mizuno.com/jp/sustainability/
https://corp.mizuno.com/jp/sustainability/sustainability-report/management/system/

取締役会は、当社グループが直面する気候変動問題の重要性を認識し、CSR(企業の社会的責任)として取り組んできた環境保全活動に加え、2020年「長期経営方針」を改定、併せて「SDGs推進指針」と「価値創造ストーリー」を策定し、気候変動問題への取り組みを加速させることを決定しています。
気候関連の担当役員やサステナビリティ推進委員会・CREW21環境分科会の責任範囲は、取締役会にて定められています。サステナビリティ推進委員会(原則年4回開催)およびCREW21環境分科会(原則年6回開催)は、全社推進、環境マネジメント(温室効果ガス(GHG)含む)、情報開示、投資家対応の実施状況を取締役会に報告しています。
サステナビリティ推進委員会(社内名:MIZUNO CREW21本委員会)
人事総務担当の執行役員が委員長を務め、製品開発担当執行役員、総合企画室担当執行役員、経理財務・法務担当執行役員のほか、サステナビリティと密接に関連する法務室長、品質保証室長、などその他幅広いメンバーで構成しています。
サステナビリティ推進委員会は、ミズノのサステナビリティ戦略の議論、具体的な取り組み課題とその実行計画の立案、目標の設定を行い、重要な課題は、取締役会に上程し、取締役会の決議を経て、全部門・グループ全拠点に展開しています。
CREW21環境分科会
人事総務担当の執行役員、製品開発担当の執行役員、商品企画、開発、施設サービス、物流、小売、品質保証、人事総務、法務、物流、品質保証、各事業部、施設、工場など主要な部門の責任者をメンバーに、環境方針の策定・改訂、短期・中期・長期環境目標の設定や目標達成のための具体的施策などを討議しています。事業活動における温室効果ガス排出量の削減をはじめとした環境負荷の低減や、環境に配慮した製品・サービスの開発と提供が重要という観点から、環境配慮型商品・気候変動対応商品の方向性や事業計画の立案など、全社横断でコミュニケーションを図る会議体として位置付けています。
また、グループ全体で環境保全活動を推進するために、法務担当の執行役員をトップとした環境マネジメントシステム(EMS)を構築しています。
※ 当社グループは、全ての企業活動が環境に影響を与えていることを自覚し、地球環境の保全に貢献することを目的に、1991年9月に「Crew21プロジェクト」を発足させて以降、環境保全活動に取り組んできました。プロジェクト開始から30年の節目の年である2021年4月から、環境保全活動だけでなく、社会的、経済的な領域も包含したサステナビリティ全般を経営課題として推進しており、「MIZUNO CREW21」を当社グループのサステナビリティ活動全体を象徴するロゴとして制定しています。
【TCFD要求項目:2.戦略】
短期・中期・長期において関連があると考える側面については、サステナビリティ全体でマテリアリティを特定し、かつ、マテリアリティの中で「ライフサイクルを通じた地球環境への責任」において気候関連課題の解決に取り組んでいます。また、EMSに加え、リスクマネジメント委員会(委員長は代表取締役社長、副委員長は執行役員3名、委員は内部統制をつかさどる部門の部門長5名により構成)やグローバル人事総務部所管の事業継続計画(以下BCP)対応で、検討を進めています。プロダクト部門・開発部門では、環境配慮型商品と気候変動対応商品(気候変動の影響を緩和する商品や気候変動に適応する商品)の開発・販売を機会として捉え、検討しています。
特定した気候関連課題が事業・戦略・財務に与える影響については、EMSのリスクと機会として2015年度以降検討してきましたが、2021年度以降、より活発に議論を進めています。具体的には、事業に関しては物流BCP、戦略に関しては環境配慮型商品や気候変動対応商品、および新規材料の研究や開発、財務に関しては再エネ導入などを抽出しています。2022年度は、リスクマネジメント委員会において、アパレル部門、フットウェア部門におけるBCPでの分析に伴う気候関連課題が、事業・戦略・財務に与える影響についても討議しました。今後も各部門での検討を進め、当社グループ全体として、気候変動のリスクと機会を物理的、規制関連、その他に分類し情報を開示していきます。
シナリオについては、現時点では、どのようなシナリオを選択するかも含めて検討しています。気候変動関連のリスクと機会、およびそのインパクトをビジネスモデル/バリューチェーンを含めた上で分析し、組織戦略に組み入れ、2024年度には採用したシナリオでの情報開示を目指しています。
【TCFD要求項目:3.リスク管理】
当社グループは、ISO14001に基づくEMSの手法に則り、コンプライアンス部門に所属するEMS推進事務局(環境推進事務局)が1年に1回以上の頻度で気候変動を含む環境リスクと機会の把握・識別を行っています。識別されたリスクと機会は、EMS推進事務局からCREW21環境分科会に提出され、委員長・副委員長と委員会メンバーによって承認されます。気候変動に関するリスクの中でも豪雨や台風などの風水害についてはBCP対策としても実施しています。
洗い出されたリスクは、EMSにおいて管理されています。EMS推進事務局は、リスクマネジメント委員会、グローバル人事総務部門と連携し、リスクのモニタリングを行っています。
【TCFD要求項目:4.指標と目標】
気候変動の緩和に向けた取り組みを加速させるため、2020年8月に長期環境目標を見直し、2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指すことを定めました。2030年のScope1、2においては2018年比で30%の削減、Scope3のカテゴリー1とカテゴリー12においては2018年比で50%削減(製品当たり)を目標として設定しました。

これらの環境目標達成に向け、CREW21環境分科会の下部組織としてグループ横断のメンバーが参画するカーボンニュートラル分科会を2021年1月に立ち上げ、関連部門が自社の事業活動および製品・サービスのライフサイクルにおける温室効果ガス排出削減目標に関する具体策を検討しています(より環境負荷の少ない素材の利用や設計・製造工程の改善、製造方法の研究開発および採用など)。
なお、Scope1、Scope2は2000年から、Scope3は2015年からGHGプロトコルに基づき算定・開示しています。Scope3のカテゴリー1およびカテゴリー12については、国内を対象とした購買額および配送データに基づく方法から、より現実に近い計算方法に変更するために、LCAに基づく算定方法への見直し、かつ、開示範囲の拡大に向け、グローバルを対象とした算定方法の確立を2021年度に実施しました。2022年度からはScope1,2,3総排出量をの開示をしています。
温室効果ガス排出量の実績の詳細は以下をご参照ください
2022年度 その他の間接的な温室効果ガス排出量【*a】

Scope | カテゴリー | カテゴリ名 | 温室効果ガス排出量
(t-CO2e) |
内訳比率 |
---|---|---|---|---|
Scope1 | 自社の直接排出 | 3,420 | 0.80% | |
Scope2 | 自社の間接排出 | 10,907 | 2.54% | |
Scope3 | 他者の間接排出 | 415,377 | 96.67% | |
内訳 | カテゴリー1 | 購入した製品・サービス | 326,338 | 75.9% |
カテゴリー2 | 資本財 | 16,896 | 3.9% | |
カテゴリー3 | 燃料・エネルギー関連 | 3,663 | 0.9% | |
カテゴリー4 | 輸送・配送(上流) | 15,286 | 3.6% | |
カテゴリー5 | 事業から出る廃棄物 | 364 | 0.1% | |
カテゴリー6 | 出張 | 2,533 | 0.6% | |
カテゴリー7 | 雇用者の通勤 | 4,161 | 1.0% | |
カテゴリー8 | リース資産(上流) | 3,885 | 0.9% | |
カテゴリー9 | 輸送・配送(下流) | 137 | 0.0% | |
カテゴリー12 | 販売した製品の廃棄 | 42,114 | 9.8% | |
合計 | 429,703 |
※ 購入電力はロケーションベースで排出量を合算。
※ 算定対象はミズノ国内・海外グループ
※ Scope1=自社における燃料の使用など、直接的に排出する温室効果ガス排出量
※ Scope2=自社が購入した電力、熱、蒸気など、間接的に排出する温室効果ガス排出量
※ Scope3=サプライチェーンにおける製造、輸送、出張、通勤など、企業が間接的に排出する温室効果ガス排出量
※Scope1と2については、エネルギー起源の排出になります。
Scope3については、環境省ガイドラインより非エネルギー起源の温室効果ガスを一部含んでおります。
※ Scope1,2
GHGプロトコルで定義されている企業活動による温室効果ガスの直接排出および間接排出。
※ Scope3/カテゴリー1
製品カテゴリーの特性に応じて以下3つの方法で算定を実施しています。
・ミズノが当該年度に販売した製品の代表モデルのLCAを実施し製品の排出係数を算定。販売数量に排出係数を乗じた温室効果ガス排出量 - ①
・製造部門では、製造で使用した物質の使用量に排出係数を乗じた温室効果ガス排出量 - ②
・ミズノが当該年度に販売した製品の原価に環境省で定められた排出係数を乗じた温室効果ガス排出量 - ③
温室効果ガス総排出量 = ① + ② + ③
※LCA算定には、LCIデータベース IDEA version 3.3の係数、サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース(ver3.2)を使用
※ Scope3/カテゴリー12
製品カテゴリーの特性に応じて以下3つの方法で算定を実施しています。
・ミズノが当該年度に販売した製品の代表モデルのLCAを実施し、環境省で定められた廃棄に係る排出係数を算定。販売数量に排出係数を乗じた温室効果ガス排出量 - ①
・製造部門では、製造で使用した物質の使用量に廃棄に係る排出係数を乗じて算出した温室効果ガス排出量 - ②
・①から算出したGHG排出量を基準に、売上金額で推計した温室効果ガス排出量 - ③
温室効果ガス総排出量 = ① + ② + ③
※LCA算定には、LCIデータベース IDEA version 3.3の係数、サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース(ver3.2)を使用